「Seven layers」でやりたかったこと
「Seven layers」という映像を制作した時の考えを書いていきます。
https://www.youtube.com/watch?v=E8nKUVNlc3A
やりたかったこと
グラフィックソフトウェアのレイヤーをモチーフにして、視点を平面的・立体的にと切り替えることで面白い映像が作れないか試してみました。
これまでレイヤーを重ねて画像や映像を作ってきたので、漠然とこういうアイデアは以前から思いついていた気がします。
ただし特定のツールの使用経験者以外にもわかる表現にはしたいと思いました。
また個人的な経験として、昔Flashアニメーションが流行っていた頃に作品のプロジェクトファイルを配布している方がいて、そのファイルでレイヤーの使い方を熱心に見ていました。
そういった当時興味を持っていたシンプルな2Dアニメーションでの工夫も、映像のアイデアとして盛り込めないかと考えました。
https://gyazo.com/85a608c52756fc64a47d17bc5bbd4523当時印象に残った工夫:ストロークが一体化したように見せるために、サイズの違う円を重ねて背景と同じ色で塗る
https://gyazo.com/4a0b1630bd41426af3bbffa9b06d9319当時印象に残った工夫:奥行きを出すために、遠いものを遅く近いものを早く動かす
上記の例は今なら「円のパスをマージ」「3D上に絵を配置しカメラ移動」などをしたほうが適切に実現できると分かるのですが、今回はわざわざレイヤーを組み合わせて工夫して、その工夫が分かるようにレイヤーの重なりを示してみると面白いかもしれないと考えました。
楽曲
Ym1024さんの「Double Magic」を使用させていただきました。(自分としては久々に、映像のタイトルを曲名ではなく別の文言で命名してます)
リリース当時「AD:Electronic Dance 2」収録のバージョン→BMSバージョンと聞き、特徴的な音の繰り返しが印象に残っていた楽曲でした。そこに合わせた動きを作りたいなと何度か考えていて、遊びで動きを作ったこともあったり…
今回しっかり取り組めて楽しかったです。
各シーン
一枚絵⇔レイヤーごとの絵で切り替える
映像の冒頭では「2D映像→レイヤーごとに分割」、最後では逆の順番で見せています。前述の「2Dアニメーションでの工夫」を取り入れようとしたパートです。
2回ほぼ同じモーションをループしています。ループだとわかりやすくするために枠下端にタイムラインをつける案もありましたが、説明的になりすぎたので結局無くしました。
https://gyazo.com/0d970036d2a57d90a0246ede0264de03立体物っぽい形
https://gyazo.com/4a6c29f0747224ad59e5c66edd3cb7bc空間、遠近
https://gyazo.com/029bf5b2d4b0080fe1619ee515535879トンネルを抜けるような、奥行き方向へのカメラの動きを再現
またレイヤーに高低差がつくことで見え方が変わるネタがないか色々探していました。
https://gyazo.com/a08c0e9eb1edbacc0d32ca4febd0817c高低差が見えるもの
https://gyazo.com/e2fd578fbd83f0db9517e89807eb03a2完成品はきれいに見えるけどレイヤーの下に隠れた部分はドタバタ
空間上に物があるっぽく見せる
上から見ると立方体などの物体が空間上で動いているように見え、カメラが動くとレイヤーに映されている映像であると分かる、ということができないか試してみました。
https://gyazo.com/c358b72ca2d66506455e0aadda21c67f
物体に光が当たっているように見せるのが効果的かと思い、多用してます。
カメラなどから映像制作を始めていない自分は、昔のFlash作品などで擬似的に描写される光(フレア)の表現を見て「光っぽい丸やら六角形やらが一番手前のレイヤーにあるな」という浅い理解から入っていて、それが今回の映像に表れていると思います。
https://gyazo.com/c01022b7c2074baf89e9045ee3622ff4フレアに対する当時の表面的でざっくりしたイメージ
Optical Flaresのプリセットを割とそのまま使っています。光の記号らしくわかりやすいほうが良いかなという思いもあります。カメラの角度によってフレアが扁平になったり角度がついたり、レイヤーの枠にフレアの表示が限定されたりと、通常のフレアとは一味変わった見え方になってくれるかなと思ったのですが、普通に眩しくなってしまいました。
各シーンで光源の動かし方や影の落ち方にバリエーションを持たせてます。
https://gyazo.com/4fdb62c043c144aaa24675626fce52b8光が遮られたフレームだけフレアが消える
https://gyazo.com/f5f954f945500d86e31f000867489a61奥行き方向に物が動き影が落ちる
https://gyazo.com/0fea90781a461008a6a46da3ade0183d地面に落ちる影の形を操作する
光と影を変なふうに使う
何かを描くときに、光源はどこか、ハイライトが入るのはどこか、影で暗くなるのはどこかなど、光の当たり方や影の落ち方を意識するように教えられることは多いと思います。
https://gyazo.com/7f24bb30c891b57c7272a6f45ad83b87
その光と影の位置を間違えたいというアイデアがありました。
CGでシーンを作ってライトを配置し、影含め7レイヤーに分割し、レイヤーごと別々に回転させることで違和感や面白さを生めないか試してみました。前半は光源と影やハイライト等の位置がバラバラで、後半ピタッと合うようなイメージで動きを作りました。
やってみたら意外と、光と影がバラバラでも「一発で気づく人いないだろうな」と思うくらい馴染んでしまいました。
最初は2つの光源をもっと激しく動かしていましたが、このネタ的にはゆっくり動かす方が見やすいと思い調整しました。
https://gyazo.com/0af8c01d14154d12fbc28d943756deca
写実的に描かれたものをレイヤー分けする
1つのものを何枚もレイヤーを重ねて細かく描き込むケースもあると思います。それに近いことをやろうとしました。
https://gyazo.com/e59847f2a77993e7faecb8616dd3282a描き込むといってもこれはCGだけど
今回は球体のハイライトをライトごとにレイヤー分けしています。真上から見たときに球体に光が反射してるっぽく見え、そのまま現実的な風景のシーンに移行すると面白いかなと思いました。
https://gyazo.com/ab16b1d3e397c7f8aa194344a19cfa28
「実際にPhotoshopやペイントソフトで描くとしたらレイヤー分けされるであろう表現」をちゃんとレイヤー分けする方向で、動画全体で深掘りしてもよかったかなあ、と振り返ると思います。
まとめ
やりたかったことは大体試せたと思います。わかりやすく伝えたいというより、思いついたアイデアが実際に形になるか試したいというモチベーションが大きく、一見して伝わりづらいものを結構使ってる気がします。技術的な課題もありますが、今回は自分が初期の頃に得た知識や感覚をもとに割と素直に作ったつもりです。
おまけ
本作はFRENZ 2023というイベントで上映されました。
終演時に作品出展者やスタッフが素材を持ち寄り、それが組み合わさったエンディング映像が流れるのが恒例になっていて、それに向けて5秒のエンドカードを作ることになりました。
https://www.youtube.com/watch?v=tCsPVBETga4
今作にちなんだ内容で何がいいか考え、実際に7枚の透明なレイヤーを工作して作ってみたらどうかと思いつき、アクリル板にカッターでひたすら溝を入れ同じ大きさに割り、レイヤーを複製しました。
https://gyazo.com/fe7d35486cf39a628530e0d2545d89c6 https://gyazo.com/9cea471be3fb4da4743c691ba553047bあふれる手作り感
絵の具を押し入れからひっぱり出しアクリル板に塗りました。
制作と同時並行でここにエネルギーが偏るのもどうかと思いつつ、久々にこういう工作ができて楽しかったです。