2018年7月
2018/7/10
https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51X7RJcQAnL._SX350_BO1,204,203,200_.jpg
『作家の時間』の増補版が出版されました。私は旧版も持っていますが、何しろこの増補版には中・高校の国語での実践と高校の英語での実践が加わっています。これを読まないわけにはいかない! ということで、中高の国語の項の著者の方から購入させていただきました。まことにありがとうございました。
入手して、早速その「中高の国語」と「高校の英語」の項目を読みました。「中高の国語」の方は、著者のブログでも紹介されている内容でしたが、大変スッキリとまとめられていました。また、こうした形で改めて読むことで、やはり著者が示すことの重要さがよくわかります。
著者が特に強調することは「教師も学習者と同じ条件で、一緒に書く」ことの重要性でした。
書くことに対する生徒たちの不安感を理解し、そして和らげ、しかも書く技術について教師自身が学べるという極めて強力な方法があります。「生徒と同じ条件で教師も一緒に書く」ということです。ライティング・ワークショップの授業をつくるうえにおいて、これ以上によい方法を私は知りません。p.195
私はここまでその重要性についての実感はありませんが、今回のライティング・ワークショップの実践においては、自分も学生に要求したのと同じ条件で作品を書いてみました。その結果、著者が述べておられることのいくつかは納得できます。まず共感するのは、「自分で書いたものを他人に読んでもらう不安を自覚するようになりました」(p.196)ということです。私は自分の書いたものを学生に見せることにそれほど抵抗感はありません。しかし、今回改めて自分の書いたものを学生と同じ条件で評価に晒す、ということを意識すると、やはりその内容を大きく変えざるを得ませんでした。当初書こうとしていた題材を途中で諦め、全く別のものに変えたのも、後で学生から評価を受けると考えたからでした。この実感は、今回は新鮮なものでした。
もう一つ共感するのは、「自分で書くことには、さらに大事なメリットがあります。それは、一人の書き手の姿を生徒たちに見せられるということです。」(p.196)ということです。今回に授業では、ミニ・レッスンで私の書きかけの文章を題材にして、プロットの立て方や修正の実際の姿などを見せました。そのおかげで「ひたすら書く」時間が減ってしまって、学生からブーイングもあったのですが、同時に私の実際の作例を見せることで、より具体的なレッスンになったようでした。これは、学生のふりかえりを読んで実感することです。
「高校の英語」の項目は、こちらも参考になることが多くありました。特にこちらでは、カンファランスを実際にどう行うのか、生徒とどんな話をするのか、生徒をどうサポートするのか、という具体例をよく理解することができました。英語でライティング・ワークショップを行う場合、まずは日本語で書くための題材を出させ、それをプロットにまとめ、それらを英訳する、という工程が必要です。それらの一つ一つにおいて具体的なカンファランスの過程が示されています。
考えてみると、英訳する過程も日本語で文章を書く過程も、文章を書きなれていない学習者にとっては、あまり変わらない困難さがあるのかもしれません。そうであるならば、日本語で文章を書かせるライティング・ワークショップにおいても、この「高校の英語」で示されているカンファランスの内容は大いに参考になると思います。
私が個人的に印象に残ったのは、筆者が挙げている事例の中で、時間不足のために生徒に授業の中で作品を仕上げさせることができず、家で続きを書いてごらんと投げかければよかった、とする場面での以下の記述です。
重要なことは、実際に家で書いて来るかどうかよりも、そのような力があるだろうと信じてあげることだろうと今は思っています。もし、家で書いて来ることできなければ、それをふまえて、次にできることを考えればいいだけなのです。この時には、そのように発想することが私にはできませんでした。(p.207)
これは、第2回目の作品を今書かせようとし、その提出を夏休み終了後に設定している私を励ましてくれることです。学生を信じてやればいいのですね。そして、できなければその対応をすれば良いのですね。「学習者を信じる」というのがWWやRWでの大切な教師の在り方なのですが、改めてそれを気付かされました。
また、重要だなと思うのが以下の記述です。
ライティング・ワークショップに出合う前、添削作業でへとへとになっていたことが理由で、私は一人ひとりの生徒と対峙していませんでした。指示すること、課題をやらせることで「いっぱい」だったのです。生徒が書いた英文を添削している時も、単に数をこなしているだけでした。 しかし、ライティング・ワークショップの実践を通して、私自身が生徒たちと寄り添う方法を学ばせてもらいました。一人ひとりの生徒が成長する道筋を見いだし、その道筋を教師も一緒に歩むのです。時には、険しい道でもあるかもしれません。しかし、教師としてその道筋を歩むことの「価値」と「喜び」を今は感じています。(p.210)
これは、私も実感し始めていることです。私の場合は学生に書かせている「WWの記録」の記述を通してですが、学生一人ひとりの変化を感じています。彼らは、最初は自由に書くことにものすごい抵抗感を示していました。しかし、次第にその楽しさがわかってくると、私が予期した以上の学びを自ら貪欲にこなしていきます。書く楽しさがわかってきた、友人の作品を読んで違う表現法を学んだ、刺激を受けて次は別の作品を書きたい、などなどと彼らはどんどん成長していきます。その姿を、一枚一枚の記録用紙の記述から読み取ることができます。もう、一人ひとりに対する成績付けなど、この記録用紙での記述で十分だと思うほどです。
自分の好きなものを自分の好きなように書く、というWWの本来の方法に取り組ませることによって、学生たちは大きく変わっています。その裏付けをこの増補版から得ることができましたし、また私自身の実践に参考となることも得ることができました。旧版を持っている方も、この増補部分を読むだけでも、新たに入手する価値があると思います。
2018/7/6
金曜日はライティング・ワークショップを行っている授業があります。今、先週の学生の記録を読んでいました。先週は、4月から行ってきた作品執筆の第1回の締めくくりとして、学生一人ひとりが作品を印刷し、それを友人たちに無記名で鑑賞させました。ほぼ全員の学生が、友人の作品を読むのは楽しかった、面白かった、という感想を書いていました。
それらを読むうちに、いくつかのことに気づきました。以下は学生の記録をいくつか紹介します。
いろんな人の作品を読んで、文章力がすごいな…と思いました。もう少し自分の作品を直したい…と思いながら読んでいました。
他の人の作品を読むことができて楽しかったです! それと同時に、次に書くことのアイデアが浮かんできたので、スラスラ書けそうです。
こういう文の書き方もあるのか、構成の仕方もあるのかなど、人の作品を読まなければ気づけなかったことがたくさんあった。
色々な話を読むことができて良かったです。自由なのでテーマが様々でとても面白かったです。次回の作品のアイデアにもなりました。面白かったという感想をもらってとても嬉しかったです。
色々なお話が読めて、本当に楽しかったです! みんなの文章がすごく読みやすく、すごいなと思いました。私ももっと上手な文章を書けるように頑張りたいです。
これらの学生の感想を読んでいて、私は驚きました。半数くらいの学生が、友人の作品を読んで自分の作品について振り返り、自分の作品を直したいと思ったり、次のアイデアを得たり、文の書き方や構成の仕方を学んだり、意欲を得たりしています。これらについて、私は何も指示していないのです。私からの何の指示もないのに、彼らは友人の作品を読むことで自然にそうした思いを抱き、振り返っていました。その事実に、私は驚愕します。
今までの作文指導で、こうした振り返りを自然に抱かせることができたでしょうか? 多くの作文指導は、書かせる時は何も指導せず、提出された作文の不備や直すべき箇所を赤字で記して返却する、という形で行われていたと思います。この方法で、学習者たちは自らの作文を書く姿勢を改めることができたでしょうか? 何もできていなかった、と私は考えます。何も改善されていないのに、また同様の方法で作文を書かせ、提出されたものに朱入れをする……。この方法では学習者の作文能力が向上しないのは当たり前です。
しかし、書きたいものを書きたいだけ書く、という今回のライティング・ワークショップの実践は、学生たちの姿勢に大きな変化を与え得たように思います。しかも、教師である私は「自分の書き方について反省しろ」「改善点を見つけろ」などの言葉は一切言いませんでした。それでも、学生たちは自然にその姿勢を見つけて行ったのです。驚くべきことだと思います。
今日からは作品第2弾の執筆に向けて、再びスタートします。作家のサイクルを回し続けます。この方法は、ライティング・ワークショップを昨年から取り入れて以来、初めての取り組みです。これがどのような効果を生むのか、私自身もワクワクしてきました! 2018/7/2
昨日、妻が誘ってくれて家族4人で「日和山五合目」というカフェに行きました。前から行ってみたいと思っていたところです。この日和山五合目は、新潟市内にある「日和山」という山(丘?)にあるカフェです。日和山は新潟が港として栄えた頃からある場所で、全国にもいくつかある中の一つだそうです。実は、私はこの日和山のある地域で生まれ、大学3年生まで住んでいました。この日和山は、私の幼い頃の格好の遊び場でした。一人で、あるいは友人たちと、日が暮れるまで遊んでいました。何度登ったかわからないし、中腹の今はない別ルートの登山口も知っています。何かの拍子に眉毛近くをぶつけて切ってしまい、その痕がまだ残っています。そんな、思い出いっぱいの場所です。写真はカフェの屋上から見た日和山付近です。社屋や松、そして方位石が懐かしいですね。 https://gyazo.com/6b47f16a744115b3fb9cf5968c570e9c
https://gyazo.com/b44b1332c36dde2798d586f44d2d41a7
この日和山が近年、綺麗に整備されたばかりでなく、その五合目付近(全高10数メートルしかない山の五合目!)におしゃれなカフェがオープンしました。ぜひ行ってみたいと思っていたのです。行ってみてびっくり! 想像以上に素敵なカフェでした。小さなカフェですが、内部は木を中心とした造りで、吹き抜けや螺旋階段が印象的です。日和山を眺めながらゆったりと時を過ごすことができます。私は「五合目ブレンド」のコーヒーとチーズケーキをいただきました。ブレンドが美味しかった! 妻も子どもたちも満足していたようです。
https://gyazo.com/61012f5587bad6cbec8b625f252eb3a6
https://gyazo.com/befbfb4cfad99306e879c6168e12a55c
https://gyazo.com/1473cdc55de217ed9eec50e00af203f5
その後、私の元同僚で「鉄の芸術家」、霜鳥健二先生の彫刻を見に行きました。場所は「楓画廊-FullMoon」のKaede gallery gardenです。霜鳥先生は鉄を素材とした彫刻を長年制作されており、私もいくつかを鑑賞してきました。今回の作品は比較的小さなものですが、それはこの画廊の展示場の特性を考慮に入れてのものと思います。私には詳しいことは言えませんが、作品を前にして感じたままを感じるのが良いと思っているので、今回も楽しかったです。芳名録に名前を書こうと画廊の扉を押したのですが開かず、近所のおばちゃんが「閉まってるよ〜」と教えてくれました。彫刻と近所のおばちゃんやワンワンとうるさく吠える犬、のっそりとしていた猫などとの取り合わせが、また面白いものでした。 霜鳥健二展〜楓画廊 Kaede Gallery_garden
https://gyazo.com/e4c19701e989f7b491e740fa2c10e4a7