20181109「伏線」の大切さ
今日の教養Ⅰ(国語)の授業では「伏線について」というテーマでミニ・レッスンを行った。毎回、この授業のミニ・レッスンは基本的に直前となる前夜に準備をする。前日に先週のふりかえりシートに記された学生たちのふりかえりを読み、彼らが現在何に困っているか、何を求めているかを探ることにしている。ミニ・レッスンでは、その求めになるべく答えるような内容にしたいのだ。 しかし、その内容が時に思い浮かばなかったり、自分自身どう解決して良いか分からなかったりすることが多々ある。そんな場合に私が頼りにするのが「WW/RW便り」であり、「あすこまっ」だったりする。今回も両サイトを見て色々とネタを探していた。そして、あすこまさんのサイトで、短編小説のネタ本を紹介していた回があったなぁ、ということを思い出した。そこに記されている本を探したり、自分の書斎の本を眺めたりしているうちに、1冊の本が目に止まった。これはいい! と直感して資料を作り、学生たちに読んでもらうことにした。江國香織の短編小説「デューク」である。 https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/41SE62BWAYL._SX326_BO1,204,203,200_.jpg
「デューク」は上記の『つめたいよるに』に所収されている短編小説である。これを最初に読んだ時の衝撃をいまだに忘れられない。読んでいて涙を流すなど決してあってはならない場面で読んでいただけに、涙を止めるのに苦労したという強烈な記憶がある。それほどにこの短編は心を打つのだ。
同時に、この作品は学生に「伏線を張ること」の大切さを訴えるのに良いなと思った。『ギヴァー』を読んでいる彼らであるからなおさらのこと、伏線を張り巡らされた小説を読むことの面白さを実感できるだろうし、そうした作品を書くことの大切さも身をもってわかるのではないか、と思うのだ。そこで、夜中に起きだして資料を作って準備した。 今日の授業では、最初に何も説明せずにこの「デューク」を読ませた。そのあと、隣の人と自由に感想を言わせた。思惑が外れたのは、今日は半数近い学生が幼稚園実習に出ており、残っていた学生たちもいつもと違う雰囲気に飲まれて、どう反応して良いか分からないところもあったのではないか、と思う。私の予想が外れて、彼らは随分と冷静にこの短編を受け止めたように思った。授業では予定通り、この短編を元に伏線を張ることの重要性について解説し、そのあとは「ひたすら書く時間」に入っていった。あとで学生たちのふりかえりを読んだところ、少なからぬ学生が「デューク」に感動していることがわかった。うーん、それならもっと反応してくれてもいいのにね。予期せぬ反応に、私の方が戸惑ってしまった。
とはいえ、このミニ・レッスンをきっかけに、伏線を張ることの重要性に気づき、自分の作品に生かそうと思う学生がいくらか出てきていることがわかった。それだけでも、今日のミニ・レッスンはうまくいったのではないか、と思う。