20181015-1:筑波大学附属駒場中学校・高等学校への訪問
筑波大学附属駒場中学校・高等学校を訪問してきた。ここで行われているライティング・ワークショップの授業を見学するのが目的である。授業者はあすこまさん。『イン・ザ・ミドル』の翻訳者のお一人だ。今日の訪問には、たまたま某出版社の方も同席された。他に、教育実習生も見学に来ていた。今年は多くの見学者が来ているようだ。これも『イン・ザ・ミドル』効果かな? 授業は2限と3限を見学した。どちらも高校2年生の授業。場所は図書館である。大福帳を並べておくと、生徒がそれぞれ自分のものを取っていく。あすこまさんお得意のベルで授業は始まった。最初はミニ・レッスンである。今日は「推敲する」ことについてであった。文章を推敲することの重要性について解説をした後、実際の文例を使って生徒に推敲をさせた。ある著名な方の文章を抜き書きしておき、それをパラグラフ・ライティングのやり方を踏まえて文章の構成の是非を考えるよう、指示した。3分間の作業時間の後、あすこまさんがプロジェクターに書画カメラをつなげて、実際に文章の構成についての検討を例示していった。蛍光ペンを使って、文の趣旨を検討し、論理の飛躍がある部分や別の話題が紛れ込んでいる部分などを指摘していった。そして、「文章がとっちらかったと感じた時に、今のことを思い出してほしい」と生徒に伝えていた。とても分かりやすい説明だったのだが、私の見た所、特に2限はその話を聞いていた生徒が半数くらいだったかな。それでもあすこまさんは特に何も言わない。この自由度の高さが彼の授業の特徴である。 その後、30分間の書く時間に入る。生徒はChrome Bookを事前に持ち出していて、それを使って自分の文章を書き始めていた。今回は意見文を書くことがテーマだそうで、生徒は思い思いに自らの考えをするした文章を書いていた。2枚分の分量というのが要求されていることだ。残り2回分の授業の後に提出、ということだったが、生徒は図書館の畳スペースに行って書く者がいたり、本棚の陰で書く者がいたりした。また、読書をしている生徒も何人かいた。本を資料として引用している者もいた。こうした作業に、図書館という場所は最適である。本が手に届くところにあるというのは良いと思った。ライティングなのだが、確かに執筆作業中に本を参考に必要とすることはある。その際に、すぐに本を手に取れるのはいいなぁ。
この間、あすこまさんはカンファランスに回っていた。カンファランスの内容は生徒の作文を読み、それをどう直したら良くなるか、ということのアドバイスが中心のようだった。よって、一人の生徒にある程度の時間をかけていた。しかし、30分間で13、14人くらいに声をかけるそうなので、一人当たり1、2分というところか。印象としてはそれより長く止まっていたように感じた。声をかける生徒の選択は、事前に生徒たちの大福帳の前回の内容をスプレッドシートに打ち込んでおき、事前に話をする生徒の見当をつけておく、とのことだった。これは大変な作業量だ。FaceBook等でそのことは知っていたが、改めて見て大変だと思った。それでも、個々の生徒の取り組みや現状は、確かに分かりやすくなるだろう。ここが、私のライティング・ワークショップの授業の課題だ。私は127名の学生を相手にライティング・ワークショップを行っている。その一人一人とカンファランスをしたり、大福帳の内容を確認したりするのはなかなかな作業量である。さらにあすこまさんは、生徒の完成作品にはコメントを入れるそうだ。感想程度だそうだが、ここは私が誤解していたところである。プロセス・アプローチの考え方からいえば、書いている過程が大事なのであって、そのプロダクツに対してとやかく言うのはあまり意味がない。でも、書いた作品に何らかのコメントを欲するのは、やはり当然の心情だろう。ちょっと反省させられたことである。 書く時間の後、隣の生徒と今日の進捗状況についての情報交換をさせ、大福帳に振り返りを書かせた。このライティング・ワークショップでも席は毎回シャッフルしているそうだ。
私の課題は、学生とのカンファランスの内容であり、またその省力化である。一人一人に何を話すべきかはいつも悩むところなのだが、あすこまさんのやり方を見て、なるほど文章の内容まで突っ込んでいいんだ、と思った。そして、アドバイスを必要としている学生の見極めをいかに適切に、かつ省力化して行うかが課題である。最後のふりかえりをGoogle Classroomを通して書かせようかな。そうすると私からのコメントも書きやすいような気がする。検討してみたい。