音楽が止まった日
#ぼく #制作物 #音楽
(現在ニコニコ動画にのみ公開)
https://www.nicovideo.jp/watch/sm44048583
参考楽曲等
The Caretaker - Everywhere At The End Of Time
Gene Wilder - Pure Imagination
Daniel Koren - Blue Moon
きくお - わたあめ
徳澤青弦 - The Opening of ”maru”
Jackie Gleason - I'll Be Home For Christmas
品質管理用の信号
音楽理論的なこと
音感のいい人であれば気づくかもしれないが,この曲はA=440hzの標準的なチューニングではなく,全体的にピッチを50¢下げている。チューニングをずらしただけの12音階なので厳密には微分音にはカウントされない。将来的にはちゃんとした微分音音楽も作ってみたい。
この曲のリズムは少々複雑な作りになっている。これは広義的には変拍子なんだろうか...?
歩いただけでも足がもたつくくらいに気分が落ち込んでいる様子や,レコード盤を流したときのヨレヨレな感じをリズムとして表現したかったので,DAW上で64分音符のグリッドの上に音を配置していき,いろいろな配置を試して有機的に感じる揺れ方を探した。
最終的な音符の配置を楽譜に起こすと,こんな感じになった。
https://scrapbox.io/files/6782b1aa934177343da4df56.png
同じリズムを64分音符に依存しない表記にするならこんな感じ。
https://scrapbox.io/files/67846e1ec854c3eea638520d.png
ドラムのキックとスネアに沿って1小節を4拍に分ける場合,
それぞれの拍の長さは正確に$ 19:17:11:17となっている。
さらに2拍目と4拍目の中でスネアが正確に$ 11:6の比でスイングしている。
でも曲を聞いた人がこのようにリズムを解釈するのは,どう考えても無理があると思う。そこで,実際の音符の配置からのズレをある程度許容しつつ,聞く人にとってどのような解釈ができそうか色々考えてみた。
①
4つの拍の長さをおおよそ$ 3:3:2:3として,スネアを$ 2:1の比でスイングさせる。
一番単純な解釈ではあるけれど,等間隔すぎて本来のリズムよりも少し機械的に感じる。
https://scrapbox.io/files/6782b39654e75774b41190da.png
②
まず1小節を大きく$ 4:3の長さで2つに分け,前半で1拍目と2拍目の長さを$ 1:1に揃える。
さらに後半を5等分し,3拍目と4拍目の長さを$ 2:3にする。
(この結果,4つの拍の長さの比が$ 10:10:6:9になる。)
スネアは2拍目と4拍目のそれぞれで$ 2:1にスイングする。
https://scrapbox.io/files/6782b39d3e29a1781977a930.png
③
まず1小節を7等分し,$ 2:5に分けたうちの前半を1拍目とする。
さらに後半を8等分し,2拍目・3拍目・4拍目の長さを$ 3:2:3にする。
(この結果,4つの拍の長さの比が$ 16:15:10:15になる。)
スネアは2拍目と4拍目のそれぞれで$ 2:1にスイングする。
①と②にくらべてやや複雑ではあるけれど,1拍目の間延びした感じがうまく表現できている。
https://scrapbox.io/files/6782b3b1090762118082e50d.png
しれっと技術的なこと
Ring Mod Sidechain
メインで聞かせたい音を入力信号にして,背景で流れている音の音量を制御する技術をサイドチェイン (Sidechain) と呼ぶ。もっぱら背景音の音量が下げられることが多いので,ダッキング (Ducking) と同義的に呼ばれることもある。
ミキシング時に全体の音量が0dbを超えてしまうのを防ぐために使われることはもちろん,特にダンスミュージック系の音楽においては,キックの鳴っている瞬間だけコード隊とベースを無音状態にして,キックが鳴り終わってからしばらく遅れてコード隊とベースの音量を上げ,「ズン ンワァーッ ズン ンワァーッ」というリズムを作るといった効果を出すためにもたびたび用いられる。
一般的なサイドチェインでは,入力信号の音量の増加をきっかけにして背景音の音量が制御される。しかしここへリングモジュレーションを取り入れることで,入力信号の波形に合わせて背景音の波形を変形させ,聞かせたい音がぴったりハマるような波形の隙間を背景音側に作ることができる。
楽曲最後の方で,極度にリバーブが掛かりノイズと化すビッグバンドの演奏の中,今にも消えそうな声で初音ミクが囁く。バンドの演奏の音量を保ちつつ,ギリギリこの声が聞こえるか聞こえないか絶妙な感じを出すため,ミクの囁きを入力として背景に Ring Mod Sidechain をかけている。
使用したプラグインは Denis Porfiryev の RMSC 。無料かつツマミが1つという非常にシンプルなUIになっている。
https://youtu.be/hvrurQpSXpQ?si=Xn0CAHsvyxRtQ3p8