Mountain Weather in Nepal
2017〜2018に、ネパールで山行するため、気象情報を収集した記録です。
アンナプルナ・サーキットとは
世界最高峰ヒマラヤ山脈の一部。南アジア・ネパールのほぼ中央に位置する。
全長230km。トレッキングルートとして人気のある区間は160kmで、2週間程度をかけて歩く。
https://gyazo.com/d4f9221b3659b6ed485db88878fa2fca
アンナプルナ・サーキットでの主なリスク
高山病
リスクが高い。血中酸素濃度の低下が原因で、ほとんどの人はなんらかの症状が出る。
発病したら下山。症状が頭痛のみなら続行できるが、判断力に影響する。下山の判断を誤ると症状は悪化する。
重篤な症状では、脳浮腫・肺水腫による死亡。
凍傷
時期による。10月は、まだ気温が高いので、リスクは低い。
手足の指先、鼻がなりやすい。
外傷
崖から落ちる
落石に当たる
ヤクに轢かれる
https://youtu.be/pvSL7u7WnVM
など
悪天候による遭難
この記事で主に取り扱うもの
なぜ気象情報が重要か
一般に安全なシーズンと言われていても、一晩で天候が急変し👇のような事故が起こる
死者: 43、重症/凍傷: 175、行方不明: 50
この事故の背景は後述するが、独自に気象情報を確保しておくのは、より安全な山行において重要と考えた
ヒマラヤ山脈で雪が降るメカニズム
インド洋で吸湿した大気が、季節風により運ばれて山脈に到達し、大気がより高度へ押し上げられると、上層の冷気により大気中の水蒸気が凝固し、雪となる
2014年の事故の際には、インド東部〜ネパール南端にかけてサイクロンが発生していた。このサイクロンの風がアンナプルナに向けて吹き込み、悪天候となったらしい。この時の気象情報の詳細な履歴を確認したかったが、2018現在では残っていないようだった。
どんな情報が必要か
低気圧の接近
寒波の到来
通信の状況
トレッキングルート上の集落では、かなり貧弱
回線速度が不安定なため、画像を表示しづらい
マナン(MANANG)より北の集落では、3G/WiFiを使用可能な集落はなかった。
2G携帯電話を調達して持参した。電波的に見通しの良い限られたポイントでのみ電波が立つ、といった状況で、経験者でなければ、自力で救援を呼ぶのは至難だろう。現地ガイドとコミュニケーションしておくのをオススメする
数日程度の通信遮断に備えておく。
電力の状況
集落は山脈を削ってきた河川沿いの低い土地にあり、近場に水力発電所を建造している。
発電量は、電灯用に集落へ行き渡る程度。
モバイルバッテリーなどへのチャージサービスはあるが、電圧が不安定なので満充電になるかは、状況次第。
情報源としたサイト
ピーク・山頂の、天気図・天候・風速・気温・降雪雨量・凍結高度について、当日〜8日後までの予報が掲載されている
トレッキングルートの地図と見比べて、ルートに近くかつ斜面の方向と地面の高度を考慮して、近いポイントを押さえておく
地面より低い存在しない高度も掲載されているので、間違えないようにする
天気図を読む
低気圧の存在を識別できる、くらいの予備知識は備えておく
現地の気象観測設備
アンナプルナ・サーキットでは、気象観測設備を発見できなかった。
エベレスト街道では唯一、ナムチェバザールの滑走路付近に設置されているのを確認した。
という状況なので、予報の精度はそういう感じと推察される。
どうやって気象情報を閲覧するか
Google SpreadsheetsにIMPORTHTML関数で、対象のwebsiteから、気象情報を抜き出す
Spreadsheetsを、ウェブに公開する
ウェブに公開したSpreadsheetsのHTMLを、RDFにマークアップする
マークアップしたRDFを、KindleEarでスクレイピングし、Kindle Paperwhiteへ配信する よくありそうな機材では、Kindle Paperwhiteで見るのが最も省電力。
スクレイピング
Mountain Weather Forecastsは、現地時間の午前5時に更新される
Spreadsheetsのウェブ公開はキャッシュされているので、Mountain Weather Forecastsが更新されたら適時リクエストして更新しておく。Spreadsheetsのウェブ公開を、IFTTTのwebhookからGETして更新していた
急遽3日後にカトマンズへ発つようなスケジュールだったので、有り合わせで間に合わせた気がするが、もっとまともに作ったほうが楽しめるだろう。
結果、特に大事もなく行程は順調だった。気象情報を気に留めているトレッカーには出会わなかったが、安心感を持って行程をこなすという点では、大きな意味があったと思う。不安なときは、無理せずガイドを雇おう。
参考
現地ガイドの情報網
天候情報は、行程を先行している知人のガイドから、2G/SMSで得ているようだ
その場で得られる視覚情報から判断しているのが実情
2014のThorong La Passの事故
1日に200人以上がpassを渡る。完全なホワイトアウトとまでは行かなくても、悪天候の中では渋滞になり立ち往生している。屋外では立ち止まらずに進んだほうが体力の消耗を抑えられそうだ
2018のThorong La Passの状況
緯度経度を記したポールは存在したが、一片6cm程度のL字鋼であり、根元が曲がって傾いているものもあるなど、ところどころ遺失しているように見えた。ホワイトアウトの中これを頼って生還するには技術が必要に感じた
事故後に退避用シェルターが増設された。
Thorong La Pass付近、tee houseより東側に、ドアや窓がない石積みの小屋がある。一つは存在したが、もう一つは倒壊していた。
Thorong La Passを西側に越えてかなり下ったところにトタン製の広めにスペースを取った小屋が2棟ある
2018年、アンナプルナ山系にて
アンナプルナ山系の東側から反時計回りの行程を進んでいた。反対側とはいえ、全く予兆に気がつかなかった。
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