ref) authorship(作者の存在)、tangibility(有形性)、originality(独創性)
「現行の著作権法では、法的に著作権保護の対象となるためには、authorship(作者の存在)、 tangibility(有形性)、originality(独創性)という三つの要件を満たしていなければならないとされる。すなわち、その音楽は作曲者(著作者)が特定され、しかも楽譜などの具体的なメディアに固定されていて、さらにその内容が「独創的」でなければならない。
これらの特性は、しかしながら近代西洋の諸作品を特徴づけこそすれ、フォークロアと呼ばれる文化財や「作品」を規定する特徴には決してならない。バエグ族の歌も含めて、一般に民謡(folk music)とは作者不明のまま、その共同体で代々口頭伝承されてきたものである。また、個々の民謡は相互に多くの音楽的要素を共有するため、特定の曲の「独創性」について論じることは難しい。したがって、現行著作権法の保護対象の規定は、近代西洋の「作品」概念を前提とした、きわめて西洋中心主義的な性格を色濃くもつものであって、逆にこの法を盾にとって西洋世界が第三世界の文化財を合法的に搾取することが可能となる。言い換えれば、現行の著作権法は、結果的に西側による第三世界の文化財搾取の構造を一面において強化する役割を果たしていると言えるのではないか。」
塚田 健一「グローバル化と著作権問題」in 民族音楽学12の視点、徳丸吉彦監修、増野亜子編. 東京:音楽之友社, 2016. p.140-149.