土とエマルジョン/溶液
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土を媒体と考えること、そして土を介して場所を再読することとは? その際、膠/カゼイン等のエマルジョン/溶液に添加される防腐剤使用についてはいずれの場合も問題はあり、現状で人体に触れる事を考慮されたエマルジョンが安全と云えるかと考えました。
土のシルクスクリーンプリント印刷実験
今回は、複製技術のコンテクストにおいて上記の課題を検証してみました。
研究協力:スリーマスト京都株式会社 生産部部長 宮川大介による経過報告書
● 1 土と天然バインダー素材
当社の仕入業者の中で天然材料のバインダー探しから始める。業者から提示されたバインダーから試験を始めた。SNバインダー天然植物油脂(トウゴマ種子)を主成分とした天然由来のバインダー、業界でもサステナブル材料(天然材料として)として紹介される材料。有機溶剤などを使用しないヒマシ油と水、蒟蒻粉を使用し乳化させた材料。シルクスクリーン印刷ではインクの粘度を出し、スクリーンの上で転がりやすくするために乳化させる。後に土を固着させるため乳化させたものにイソシアネート系の化学樹脂を入れなければならないことが判明。天然材料にこだわりイソシアネートを省き印刷してみたが布に土を固着することはできなかった。
● 2 土とバインド(固着)させるための膠
樹脂成分がなければ固着しないことを検証しました。大樹町で害獣駆除の対象とされている蝦夷鹿の皮や骨などが廃棄されることを踏まえ、古来から鹿革などから膠を生成し膠の粘着質で壁画などを描いていたことから、膠を樹脂がわりできないかと確認に入りました。膠について調査してみたが印刷用素材業者には扱いがないことが判明。日本画では鹿膠を使用しており、画材店でも購入できるものです。Web上で使用方法の検索をかけましたがシルクプリント印刷での使用方法は見つからず、実際に実験してみました。今回使用した鹿膠は冬だったためゼリー状に凝固した状態であるため湯煎し溶き、この時柔らかくなった膠はゼラチン質より多少柔らかい状態で、これを前回使用した、SNバインダー、土を混ぜプリントしてみました。結果、土と膠とのバインダーの比率が難しくシルクスクリーンで印刷できる粘度を探し出し印刷してみたが、一枚は印刷できたが温度変化による経時変化ですぐにゼラチン質に戻り印刷は上手くいきませんでした。ただし、筆で塗ったりすることはできる。使用した感じは防腐剤のために入っているアンモニア臭が強くTシャツ等にプリントした際、肌に触れるのに危険性が伴うのと水に溶けてしまう弱点もあるので中止。シルクプリント印刷業界での洗濯堅牢度試験では移染や脱落の問題があり膠は基準値より低く扱いにくいことが判明しました。 ● 3 土とミルクカゼイン糊の接着性
カゼインは接着性も良く木工や漆喰などで使用されている。家具職人の話では子供用の椅子や机などの接着部分に使用、戦時中の戦闘機の接着にも使用され接着性の強さがあり粘度も木工用ボンド同様とのこと、糊を作る方法を家具職人から指導を受けました。実験では画材店に売っているホルベイン社製を選び処方箋どうりに実験。カゼインは膠より粘度も安定しおり気温の変化もなくシルクプリント印刷しやすい材料である。肝心な紙への印刷の密着性は問題はありませんが、布にプリントした際、皮膜層の硬さと洗濯堅牢度が弱いことが判明。
● 4 土と布
シルクプリント印刷でよく使う顔料を土と考えた時、土の粒の粒径は大きく材料で近いのがグリッター(ラメ) 0.01m/mが近い、グリッターを使う時使用メッシュは60メッシュ(#600) 通常 (80メッシュ)より粗いメッシュを使う、粗いグリッターでは格子状の網を通過できるものを選ぶ。今回、実験に使用した版60〜80で試みた。バインダーも通常Tシャツに使用しているものを使用。60と80の印刷では80が透過性が悪く薄い、60の方が濃い結果になった。今回Tシャツに印刷する上で大事なのが、浸透性と樹脂、浸透性は糸と糸の間により沢山の土を潜り込ませ、濃度も高まることがわかる、しかし浸透系の材料には樹脂成分が少ない分、クリアー系のラバーで補うことにより、洗っても色落ちしなかった。
● 5 土と和紙
Tシャツの成功により採取土の写真を紙に印刷することにする、当初は工場で使用している白ボール紙を選ぶ、土の色数も多くより白い土もあったため身近ににある白い紙を選ぶ。採取土の写真は出来たのだがより浸透性の良い和紙を使う事で土の趣きが表現出来そうなので、和紙専門店で話を聞き、より浸透しやすく白い紙を選別。浸透しやすいのは機械で紙漉きしたものより、手漉き紙の方がより浸透することを聞き岐阜県の美濃和光8匁がより白度を増しているので選ぶ。その年の紙漉きの時期により白さは生成りになったりする。次回、紙での試験は阿波紙の白厚手、北海道で牧場の跡地に笹が増えそれを使用した笹紙を作っているがこれも併せて試みたい。