『硝子戸の中』夏目漱石
晩年、身体を病みながら自宅にて療養を続ける中で書いた随筆集。
「所詮我々は自分で夢の間に製造した爆裂弾を、思い思いに抱きながら、一人残らず、死という遠い所へ、談笑しつつ歩いて行くのではなかろうか。唯どんなものを抱いているのか、他も知らず自分も知らないので、仕合せなんだろう。」
やがて訪れる自身の死の予感、生きることへの執着が静謐な筆致で書かれる。文豪と呼ばれる人間も、抱くさみしさは普遍的だ。折に触れて読み返したいと思うそんな一冊だった。