TVゲームの暴力的影響
要約
Anderson&Dill(2000)の研究によると暴力的なTVゲームの曝露時間と、自己申告の攻撃的行動には正の相関があること分かった。またSlater et.al(2003の)縦断研究(追跡調査)によってもともと暴力的な子供がTVゲームをするのではなく、TVゲームが子供を暴力的にすることも分かった。 暴力的なTVゲームをすることの影響について説明する以下の5つの理論がある。
社会的学習理論(Banduraら)
覚醒転移理論(Zillmannら)
認知的新連合理論(Berkowitzら)
脱感作理論
カタルシス理論(Feshbachら)
このうち②は日米の大学生対象の実験で支持されなかった。また⑤は攻撃行動の発散は見られても攻撃行動は抑制されにくいことで、あまり支持されていない。
①は暴力を観察し、模倣することで、攻撃的な遊びが増えるという仮説で米国の5-8歳児対象の実験で支持されたものの、大人・男子の場合必ずしも支持されないことや「人を傷つけるのを意図した行動」という意味での暴力は必ずしも活性化されないことが指摘されている。①で支持されなかった大人や男子への暴力的影響や人を傷つけることに躊躇いがなくなるような影響を証明しようとしたのが③と④であり前者は日米の大学生対象、後者は米の大学生対象の実験でそれぞれ支持され、現在、①③④を中心に一般攻撃性モデル(GAM)(Andersonら)に統合されつつある。
これら心理学、脳科学の量的分析によるゲームの暴力的影響の説明に対して、どのような影響があるのかという質的分析による研究が求められており、社会学やメディア論の援用が有効だ。また、暴力的影響があるからといって、凶悪犯罪に結びつくといった極端な影響が証明された訳ではなく、また暴力的影響の原因も「正義の味方との同一化」といった暴力の原因に一見見えない要素が関わってくることが分かっている。
意見
ゲームの暴力的影響の研究がマス・メディアを通じて一般人に伝わったときに、個々人としてその研究をどのように日常生活に生かすかという研究があるか興味を持った。青少年による凶悪犯罪の報道と日々接していれば、例え統計的にそれらが減少していても、最近の子供は狂暴化していると思ってしまう人がたくさん出てくるだろう(注1)。犯罪者がゲームやアニメを愛好していたと報道されれば、ゲームやアニメの悪影響を過剰に評価し、家庭教育においては親が経済的に権力を持っているため、そういった親にとって子供に悪影響を与えるものを買わせないような動機付けがなされるだろう。 しかし、情報化が進み、また誰もが生涯学習の観点で勉強を続けていかないといけない現代では、子供のうちから自分の学習管理や消費者としての振る舞いを意識して生活する必要があるし、持ち運びやすいタブレットを一人一台以上携帯するようになりネット環境と現実との調和的な生活を営むことが求められている。 親も情報化社会において仕事と家事と育児と自分の楽しみと勉強とをさじ加減しながら生活する高度な時間管理スキルが求められており、子供だからといって特定の楽しみを禁止すればよいのではなく、自律的にバランスをとれた生活をおくるための補助をすることをメインにゲームなどを与えるのが将来的には有効なのではないかと考える。(注2) 行動科学的助言を与えるときや時間制限を設けるときはしっかりと理由を説明したり、特定の分野に関して例えばジェンダー的に年齢に相応しくないと判断したらそれをすることを認める代わりにある程度ジェンダー論を学習させるなど人権思想や社会適応の観点で説明するなどが求められる。後者に関しては、家庭教育だけに任せるのは負担が大きいのでネットなどで有志がそういった言説を担う必要があるだろう。(注3)
またゲームには、よい意味での学習効果もあり生活の質の充実という意味で取り入れたり(注4)、プログラミング教育などではゲーミフィケーションのシステムがオープンソースの文化から派生して誕生しており、ある程度実力をつけた学習者が初級者を育成する記事を書くなどMMORPGのようなゲームの相似形としてネット上の生涯学習コンテンツが組織されていることからゲーム的思考法を学習に取り入れることが生涯学習において役立つ可能性もある。(注5) 参考資料
注1.少年犯罪データベース
注2.
注3.
『男性学の新展開(青弓社ライブラリー)』青弓社(2009)第5章 オタクの従属化と異性愛主義
注4ビデオゲームのメンタルヘルスへの影響 その2 ビデオゲームは認知機能を高める 注5
深田 浩嗣『ソーシャルゲームはなぜハマるのか ゲーミフィケーションが変える顧客満足』
(2011) ソフトバンククリエイティブ
メモ
TVゲームの暴力的影響
要約
暴力的なTVゲームをすることの影響について説明する以下の5つの理論がある。
社会的学習理論(Banduraら)
覚醒転移理論(Zillmannら)
認知的新連合理論(Berkowitzら)
脱感作理論
カタルシス理論(Feshbachら)
社会的学習理論
暴力を観察し、模倣する。⇒攻撃的な遊びが増える(米国の5-8歳児対象の実験で支持)
・大人・男子の場合必ずしも支持されない。「人を傷つけるのを意図した行動」という意味での暴力は必ずしも活性化されない。
覚醒転移理論
暴力映像を見ることで、生理的覚醒(心拍、呼吸数の増加など)が生じ、攻撃行動が促進される。(日米の大学生対象の実験で支持されず)
認知的新連合理論
暴力的映像を見ることで、攻撃的な記憶・思考など認知的プロセスが活性化される。(日米の大学生対象の実験で支持。)
脱感作理論
暴力的映像を見ることで“慣れ”が生じ、心理的に鈍感になり、暴力的だと知覚されにくくなる。(米:大学生対象の実験で支持)
カタルシス理論
怒りやフラストレーションなどを発散し、攻撃行動が抑制される。⇒発散はされても、攻撃行動は抑制されにくい。あまり支持されていない。
現在、①③④を中心に「一般攻撃性モデル(GAM)(Andersonら)」に統合される途中。
「影響はある。」しかし「どのようあ影響か?」が重要。
ゲーム研究(心理学的な量的分析が多い)ばかりでなく
ユーザー研究(社会学・メディア論的な質的分析)の必要性
『ゲームと犯罪と子どもたち』 オルソン&カトナー 1254人の児童と500人の保護者にインタビュー調査。
「人々は、心配しなくてもよいことを心配しすぎる一方で、はるかに影響を及ぼしかねない問題について、あまりに無頓着。」
学校で先生に怒られたので、「グランド・セフト・オート」で先生に似た女の人を殴り殺すプレイをして憂さ晴らしをした。
・このような例でさえ、凶悪な暴力犯罪に結びつく確証はない。(というか、ゲームプレイヤーのよくある姿にすぎない)
・しかし、いじめなどの問題行動には結びつく。
・ゲームに費やす時間が増えるほど、いじめの加害者になる割合は増える。
坂本章らの研究(2005)
・残虐な殺人シーンが描かれるTVゲームよりも、親が子供に見せても大丈夫だと思えるような『ヒーローもの』のTVゲームの方が、子どもの攻撃性を高めやすい可能性。
・「世間的に暴力的だとされるゲーム」と「実際に子どもを暴力的にするゲーム」とのギャップ。
・「正義の味方との自己同一化」という、暴力の原因に見えにくいものこそが実は原因である可能性。
・TVゲームの暴力的影響はある。だがわれわれの思わないような形で。
ゲーム脳。脳が可変して性格がサイコパスになるというならばそれは回避させたい。
親にとって悪と善の二分で悪と決めつけるのは簡単な選択。ヒーローものはダメとか。とりあえず禁止。お金の使い方という観点。親が子供にとって役立つという使い方でしかお金を与えない。消費者教育という自主性の観点で。
外で遊ばなくなる。クラブ活動などと並行して。
勉強しなくなる。…勉強だけをさせればいいという訳ではないし、勉強だけしかできない環境であっても興味が持てなければよくない。友達付き合い。
ゲームの考え方で勉強する。プログラミング教育。
生涯学習の観点からはいかに自律的に学習できるかが重要である。
ゲームと現実との区別。仕事と家庭との両立。勉強とゲームの両立。仕事と勉強と家事と育児の両立。
ゲームが暴力的影響を与えるという仮説を証明したいならば、「ゲームは暴力的影響を与えない」という帰無仮説を立てて、実験で有意水準以下の稀な確率事象が見いだせるなら帰無仮説が棄却できて
ゲームの暴力的影響という言説群の与える影響
結果から推定するベイズ統計学。依存が疑われる人は400~500万人
リスクをしっかり提示できるか。そしてそのリスク評価のうえで自分の行動が社会逸脱的になっているか、どうか評価する。そして依存気味であり社会不適応さが増してしまった場合、ゲーム依存からどのようにして抜け出すのか。
適度にそしてよい影響を受ける意味でゲームを楽しむことはできるか。
ゲームの虚構性をどう考えるか。インターネットでの人格が、他者と協調的であるために、議論する際に注意するなどのマナーを守る必要がある。勉強においても趣味の共有など生活の充実のためにもサイバー空間での非対面的関係の時間の使い方が増えている。メディアリテラシーなどの本である程度の基礎を学ぶことができるが、細部までは自分で実践して試行錯誤するなかで身に付けていく。
授業を受ける前と受けた後でどのように考え方が変わったか。
生徒の属性(理科や数学、国語の能力)との関係。
自分が親の立場になって、我が子に対してゲームをどのように与えるか。
社会秩序維持の観点で、大きく秩序を阻害するものとして規制をかけるべきか。
子どもは自分を客観的に評価できないので、親が介入する必要がある。しかし、大人であっても、客観的に評価できない人間がいる。
生活習慣のうえで望ましくない。
ジェンダーの観点で望ましくない。
暴力の観点で望ましくない。
少年犯罪データベース
TVゲームの暴力的影響
メディア論の授業で先生が、ゲームの暴力的影響について話した時に、子供が自分を正義に同一視することによる暴力行動の助長に繋がると話して、加えて最近のアンチ・ヒーローものも悪の立場に見えるものが実は正義だったという反転でしかないと言ってたことの後者の部分にちょっと疑問を持ちました。 先月読んだ時はつまらなく感じたソードアートオンライン17巻が、メディア論の授業受けてゲーム史やゲームの暴力的影響、携帯電話のもたらした現実世界と虚構世界についての論文とか読んでから読み返すとすっごく面白く感じる。ぐいぐい読めるわ。 ゲームの暴力的影響の議論を、バトラー『触発する言葉』に基づいてすると面白そう。プログラミング教育におけるゲーミフィケーションのように各学習者が自発的に善きものを求め、産み出していく文脈においてメタルギアとかスマブラとかを解釈していく。ゲーム理論とかも援用する。