油断ならない商売
(2006/12/30)
3年の間、軽微な故障に対する修理がすべて無料になる
保証を利用しなかった場合は3年後に全額返却される
一見お得に聞こえるが、よく考えるとこれは全く得とは思われない。全額返金されるのはこの保証を全く利用しなかった場合に限るので、軽微な故障の場合はこの保証を使わず自腹で修理する可能性が高いだろう。このように保証を利用しなかった場合や全く故障がなかった場合も別にユーザが得をするわけではなく、貸してた金が無利子で返ってくるだけの話である。要するに、3年間の小さな故障の蓄積が$1500を越えた場合のみこの保証が得になるわけだが、10年落ちのボロ車でも部品の修理に大きな金がかかることは稀であるし、トヨタの新車の部品が3年間に$1500ぶん以上故障する可能性は非常に低いため、この保証によりユーザが得をする可能性は限りなく低いはずである。
こういう商売は、詐偽だとまでは言わないが愉快なものではない。よく注意して計算しないと損得を判定できないという問題があるのに加え、損な判断をしてしまった場合でも保証自体は有効だからユーザが判断ミスを反省する必要がなく、安心を金で買ったのだと考えて満足することができる。つまりディーラーは非難を恐れることなく圧倒的に自分に有利な契約を勧めることができるわけである。 この保証以外にも、盗難車の発見を有利にする特殊ステッカーやGPSシステムとか、後部障害物を発見するためのセンサなどを執拗に勧められた。車が盗難されたうえにステッカーのおかげでみつかる可能性などゼロに等しいし、センサのおかげで事故が防げる可能性も相当低いだろう。確率を考えると全く無駄な投資だと思われる。
車の価格交渉という最大の難関を越えた時点でこのような提案を持ってくるというところも巧妙である。本当に重要な機能なら車体価格に含めて提示していいはずだが、その時点ではまだユーザは油断していないので売りにくいということなのだろう。交渉が終わった後で、なんとなく安全や便利さに金を払ってもいいかなと油断していると、つい契約してしまう可能性が高いだろう。 車の販売価格自体については情報が充分流通しているので大きな儲けが見込めないと思われるが、ユーザの心理を操作して付加的な部品や保証を買わせることによって利益をあげようとしているのであろう。そういうディーラーの気持ちはわからないでもないが、ユーザの計算能力不足/勘違い/油断につけこんだ商売は根本的に誉められたものではないと思うのだが。
ポイントをまとめてみる:
実は損なのだが、慎重に確率計算しないと損得がよくわからない商品を売る
客が油断しているタイミングを利用する
損な判断だったとあとで気付いてもすぐあきらめられる範囲にしておく
嘘は言わずあくまで客の判断にまかせるが、メリットを強調して執拗に勧める
車の部品は壊れやすいとか事故は嫌だとかいった漠然とした不安感を利用する
やっぱり詐欺的だな...