不格好経営
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DeNAを作った南場智子氏の本
マッキンゼー社員だったとき同僚を誘ってオークションサイトを起業し、 その後モバイル対応して「モバゲー」を大当たりさせた人物の本である。 すごく面白いとか感動するとかいう書評が多かったのだが、 そういう期待は大きく裏切られてしまった。
この「DeNA」という会社のサービスを私はひとつも使ったことがないし、 周囲の人間も誰も使っていないようなのでサービスの内容はほとんど知らないのだが、 最近は「モバゲー」というサイトでケータイのゲームやソーシャルゲームで儲けているらしい。 数年前に野球の球団を買収し、現在は「DeNA」という名前の球団があるのだそうである。
モバゲーというものは、話を聞く限りでは「パチンコ」のようなもので、 何の役にもたたないけれども異常にハマって金を使ってしまうものらしく、 主に貧乏人から集金する「貧困ビジネス」に見える。
世の中にはいろんな仕事があるが、 ほとんどの人は自分のサービスを喜んで利用していると思われる。 農家の人は自分の作った野菜を食べるし、 JR職員はJRに乗るし、 雑誌編集者は自分が紹介した本を読んだり服を着たりするし、 私は自分が作ったソフトやサービスを毎日使う。 「Eat your own dog food」という言われるように、 自分が作ったものを自分が使うことは大事なことである。 Steve JobsはiPhoneを使っていたし トヨタ社長はトヨタ車に乗っているが auの社長はLismoを使っていないだろうし ソニーの社長はプレステに興じてたりしないように見える。 DeNAの社長は誇りを持って「モバゲー」で「コンプガチャ」してるのだろうか?
自分たちのビジネスが世の中のためになっているという表現は見られなかったものの、 「皆でがんばってやってきたんだから」という自己正当化には必死である。
競合他社(GREE)への取引妨害の件で公正取引委員会に告発されたときは、 「当社に法令に違反する事実があったとは思っておりません」(p154) というメールを社員に送ったらしい。 そういう問題の可能性を認識していたから「事実があったとは思っておりません」などという表現になるわけで、 本当にそんな意図がなかったならば「事実はありません」と書いたはずである。 実際公正取引委員会からは妨害を認定されている。
また、「コンプガチャ」が問題になったときは 「業界のリーダーとしてユーザー保護の施策にまっ先に取りかかり」(p187) と書いているが、 問題となる「コンプガチャ」で貧乏人から散々大儲けしておいてから 「ユーザー保護」などと言うのは大笑いである。
また、最初のオークションシステムを開発したとき、 システムを散々宣伝したり営業したりした後でいよいよ稼働させようと思ったら コードが1行も書かれていなかったことに気付いたというエピソードも凄い。 Web上のサービスを作ろうとする場合、 サービスの仕様に加えてシステムとコードが最重要だと普通は考えるのだが、 仕様さえ決めていればシステムもコードも外注がうまく作ってくれるものだと考えていたらしい。 もちろんこれは大失敗だったと認めてはいるのだが、 「『久しぶりにいい仕様書を読ませてもらいました』と言ってくれた」(p35) などと、ここでも自己正当化を忘れていない。
青少年に悪影響を与えないようにするため 出会い系書き込みをチェックする仕事風景という写真が載っていたのだが(p127)、 沢山の人が教室のように並んでチェック作業行なっている仕事場で、 試験監督の先生みたいな人物が作業を見回っているように見えるのが恐かった。 なぜこんな写真を掲載したんだろう。
文章は体言止めが多すぎるなど、特にくだけた内容の部分が読みにくくて閉口する。
ユーモアのつもりで書いてあるエピソードも寒い。 子供時代の家庭の話が恐かっただけでなく、 自分では料理しない著者夫婦がたまたま釣った大量の魚を隣家におすそわけしたら、 美味しそうな煮魚の匂いがしてきたので食事を分けてもらえると勝手に思って外で待ってた話(p66)とか、 社員が満員電車で子連れ通勤する時は子供を網棚に乗せればいいと主張した話(p234)とか、 常人が聞いたらドン引きする小町エピソードだらけなのが恐ろしかった。
コンサル仕事と実際の経営における考え方の違いなどの話は多少面白かったが、 それ以外は感心できる話が全然無かったのは残念であった。
そもそも何が「不格好」だったのかもわからなかった。 スタートアップがドタバタするのはあたりまえであって、 特に変わった不格好さがあったように見えないのだが。
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