簡潔な説明を行うにはどうすればよいでしょうか
質問
簡潔な説明を行うにはどうすればよいでしょうか。
自分では相手に必要な情報を与えつつ話しているつもりですが、職場の上司には「話が長い」と言われたり言葉尻をとらえられて脱線されたりし、逆に結論を前に持ってくると「前提を言え」と言われてしまいます。資料を使ったり腰を据えたディスカッションを行える場合は比較的に意思疎通が上手くいきますが、現在の職場のように口頭でスピード感のあるやり取りを行う場合は、あまりに相手へ意思が伝わらないために辛い思いをすることもあります。
色々なコミュニケーションの本を読み、トピックの優先順位を考えたり、報告のテンプレートを作ったりしてもあまり状況は改善されないため、最近は絶望すら感じます。こんな私に、アドバイスをお願いします。
解答
広い視点から説明するのは後回しにして、最初に質問に狭く答えると、簡潔な伝達はCBAのフォーマットによると言われます。
CはCommon Knowledge、共通知識:聞き手が知っていること→BはBut(しかし:聞き手が知らない新事実)→AはAnswer:行動につながる答え、対策です。
例をあげると
「A社に送った見積もりですが、◯◯費の桁が一桁違いました。至急、連絡と謝罪が必要です。」
C: A社に送った見積もり  …共通知識(見積もりを送ったことは聞き手も知っている)
B: ですが、◯◯費の桁が一桁違いました。…新事実(間違いがあったことは知らない)
A: 至急、連絡と謝罪が必要です。 …対策(これでいいかはともかく何かしなければならないのは確か)
「「準備して」と言われた資料ができました。次は何をしましょうか」
C: 「準備して」と言われた資料が  …共通知識(聞き手が指示したので当然知ってる)
B: できました    …新事実(やり終えたことはまだ知らないから伝えた)
A: 次は何をしましょうか …対策(やることがなくなったので、対策は別の仕事をすること)
このフォーマットの背景を説明すると、上司など仕事場でのコミュニケーションをとる相手に、こちらから一方的に意思を伝えて終わることはありません。必要となるのはむしろ「相手が意思を表明するよう促す/状況を設ける」コミュニケーションです。
コミュニケーションの問題を抱えるヒトの多くは、《前もって自分の頭の中にある伝えるべき内容を、相手に過不足なく伝わるよう適切に表現すること》が正しいコミュニケーションだと考えて努力しますが、大抵は見当違いの徒労に終わります。
必要なのはコミュニケーションを促したり、それが生じる状況をつくるコミュニケーション、いわばメタ・コミュニケーションです。サーキュラーな問題解決と同様、考え方は抽象度が高く、理解するのは少し難しいのですが、実践上はシンプルで労力少なく効果は高い。
一般的に上司は部下が何を伝えたいかに興味がありません。もっと言うと他人はあなたが言うことに興味がありません。つまり他人は予め(言外に)デフォルト値として「私に何の関係が?」という問いを発しているようなものです。上司に置き換えると「どうしろと?」になります。
CBAのようなメタ・コミュニケーションは、この言外の問い(これらもまたコミュニケーションについての問いであり、メタ・コミュニケーションです)「私に何の関係が?」「どうしろと?」に対応しています。
たとえば、こちらが示すCBAのA(対策)がたとえ間違ったものであっても(むしろその方が)、聞き手は「それはまずい。むしろ、〜〜しろ」と言わなければならない状況に置かれています。相手はコミュニケーションの中に招かれ導かれる。
まとめると、(相手がどうあろうと)こちらが正しいコミュニケーションできるよう頑張るというのでなく、相手をコミュニケーションに招き入れることを考えてみてください。
#働くということ