自筆譜や未出版の楽譜が資料としてどういう意味や価値を有するかいまいち掴めておりません
質問
友人がある古い作曲家の全集を出すとのことで、楽譜のデータをまとめるお手伝いをすることになったのですが、専門外のため自筆譜や未出版の楽譜が資料としてどういう意味や価値を有するかいまいち掴めておりません。
何か参考になる資料があれば教えていただけますでしょうか?
解答
まずご覧頂きたいのは、桐朋学園大学音楽部附属図書館の展示スクエア「自筆譜 Facsimiles 2nd version」です。
自筆譜とは何かから、音楽家が自筆譜について述べた引用、さらに自筆譜について参考となる図書や論文、Webサイトのリンクまで揃ってます。
他には、国立国会図書館で2016.3.16に開催された
「手稿譜コレクション公開によせてー林光レクチャーコンサート」の講演資料に、自筆譜の資料としての意義が簡潔に述べられています。
1.音楽作品の散逸を防ぐ
音楽は耳で聞くものであるであり、その発表は演奏によってなされます。時代的に/演奏者の意図として、録音や録画がない場合、演奏自体は残らないために、後世に残るのは楽譜です。
しかし音楽発表の中心は演奏であるために、楽譜は印刷/刊行されるとは限りません。作曲者が残した自筆譜が唯一残ったものであることも少なくありません。
2.音楽作品の研究資料として
自筆譜は、作曲の真正性(本当に○○の作曲したものなのか)や創作時期の推定、また作曲家の真の意図や創作過程の解明する研究のための資料となります。
3.音楽芸術の文化財として
批判校訂版の楽譜が出版されていたとしても、作曲家自身が書いた楽譜は、唯一無二のものといて、それ自体が文化財としての価値を持ちます。
このイベントは
国立国会図書館月報 662号(2016年6月)でも紹介されていますので、併せて御覧ください。
そもそも楽譜にはどんなものがあり、それぞれどんな問題を持っているかについては、国立音楽大学の音楽概論のシラバス
mysoundマガジンの「なぜ、クラシック音楽は、同じ楽曲でも何種類もの楽譜が出版されているのか?【演奏しない人のための楽譜入門#02 】」
などが参考になるかもしれません。