短大卒、定年間近の者です
質問
短大卒、定年間近の者です。後に続く弟の教育費用確保のため、女のお前は短大しかやれないと言われそのまま進みました。(奨学金等は当時思いつかず、大学進学に強い希望もありませんでした)
卒業後就職・転職したものの、採用条件、生涯賃金、大学全入時代になり明らかに私より学力が低そうな大卒の人(言い方が悪くてすみません)との関わり等、苦痛と屈辱の日々でした。
まだ頭が動くうちに大学の通信課程に入り大卒の資格を得たいと最近思うようになりました。早く進めたいところですが夜遅くまでの仕事と家族の介護で疲労困憊のため、定年後の進学を考えています。
それまでにしておける、またしておいた方がいい勉強は何があるでしょうか?今は英会話のアプリと趣味の読書ぐらいで勉強と言えるようなことは何もしていません。
大卒の肩書のために卒業しやすい学部が良いかと思いましたが、調べていくうちに自分は国語力に関心が強く文学が好きという気持ちに気付き、文学部を考えています。仕事で小学生に読書と言葉の説明をしていますがやりがいもあり自分には向いていると感じています。
論文も書いたことがなく短大(国文科)も高校の延長のような勉強法で乗り切ったので、果たして現代の大学の勉強が通信(独学)でやり切れるのかも不安です。どこに何を聞いたら良いのかも分かりません。
読書猿様に何らかのご助言を頂けると幸いです。よろしくお願い致します。
解答
新しいことに挑戦するときは誰しも不安ですが、大学は、高校を出たばかりの人たちでも適応できる場所です。恐るるに足りません。
さて慣れておいたほうが良い(大学をより楽しめる)ものはいくつかあります。
# 読む
大学で文学を学ぶ(研究する)と、文学作品と文学を論じたもの(評論、論文)の両方を読むことになるので、どちらもできるだけ出会っておくとよいです。特に「文学を論じたもの」の方は意識して探さないと出会えないし、慣れないうちは読み進めるのも大変なので、こちらに重点を置くとよいかもしれません。
これはたくさん読まなきゃいけないという話ではなく、「お気に入り」を見つけておくといろいろ捗る、という話です。
文学作品も様々ですが、文学を論じたもの(評論、論文)も玉石混交です。中には「そこに座れ。本の読み方を一から教えてやる」と言いたくなるような噴飯ものもあって、そういうのばかりに出会うと文学を研究する事自体が嫌になりかねません。逆に、自分で楽しく読める、そこまでいかなくても読んで許せるレベルの「論じたもの」を見つけておくと、ひどい論文や評論を読んでも「ああ、こいつが駄目なだけなんだ」と先に進めます。
もし日本の文学を専攻されるなら、手元においておくと良い本に『日本文学の見取り図』があります。主だった文学作品に加えて、それらがどう論じられてきたかを概説しており、文学作品と文学を論じたもの(評論、論文)どちらを探す場合にも「最初の一歩」に使えます。
# 書く
一番不安に思われるのが書くことだと思います。大学ではレポートや卒論など、評価はすべて「書いたもの」を通じて行われます。
アメリカでは、ランドグラント・カレッジやGI法など制度改革によって大学入学者が激増するたびに、そこに含まれる大量の「書けない人たち」への対応に迫られ、大学で書くことを教えるアカデミック・ライティングが生まれました。近年は日本の大学でもアカデミック・ライティングは教えられています。
これについては今年になって、とんでもないレベルの良書が出ました。『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』という本です。ぜひ手元に置いてください。
# 調べる
まず進学を希望する大学の通信教育課程について、資料請求や説明会参加などで情報収集をやっておきましょう。
特に、後述の「続ける」に関連する部分、大学のサポート体制にはどんなものがあるのか、活用できる学習コミュニティはあるかなど調べておきたいところです。
もう一つ、調べ物をする技術は、大学での研究や学習に直結します。調べ物が上手であればあるほど大学はより活用でき、大学生活は充実した者になります。『調べる技術: 国会図書館秘伝のレファレンス・チップス』と『もっと調べる技術: 国会図書館秘伝のレファレンス・チップス2』という本をおすすめします。
# 続ける
通信課程の最大のリスクは、継続できるかどうかです。時間管理とモチベーション維持が重要になります。
これには拙書ですが『独学大全』がお役に立つと思います。