普段利用している公立図書館(民間委託運営)が、裁判所の令状なしで利用者情報を警察に提供していたことが発覚しました
質問
普段利用している公立図書館(民間委託運営)が、裁判所の令状なしで利用者情報を警察に提供していたことが発覚しました。最近沖縄の図書館でも同様の事案があったようです。
もし読書猿さんの利用している図書館でこういう事が発覚した場合、どう対応されるでしょうか?
また、われわれ市民は図書館の自由を守るために何ができるでしょうか?
解答
難しい問題です。図書館に限らず公共機関に対しては、例えば抗議のために利用を取りやめ他の機関へ鞍替えする、ということが難しい。
私達にできるのは、知ること、そして知らせることしかありません。
警察などから情報提供が求められた場合に図書館がどのように対処すべきか、またその場合の考え方や根拠にはどんなものがあるか、については日本図書館協会の次のページが参考になります。この問題を考えるためには必読です。
残念ながら、図書館の捜査機関への情報提供はレアケースではなさそうです。
2011年に全国の図書館を対象に行われた調査では、捜査機関からの貸出記録等の照会を受けたことのある192館(回答した945館のうち20.3%)のうち、半数以上(113館)の図書館が情報提供をしたと答えています。
質問者様も挙げておられる、最近の沖縄の事例については、当地の新聞が報じ、社説や特集記事でも取り上げています。沖縄タイムスの次の記事では、県内63図書館にアンケートを実施しています。
この記事ではアンケート結果の紹介とともに、日本図書館協会の見解や国立国会図書館の国会答弁を紹介しています。
「令状がなくても照会に応じるのは義務と考えていた。任意なんですか」と答える図書館担当者なども出てきます。
次の記事では、名護市立で図書館が情報提供した件につき市議会で質問があり、教育委員会教育次長が「捜査機関への情報提供については、令状の確認が取れなければ提供しない原則を徹底していきたい」と答弁したことを報じています。
これらの事例からは「何ができるか」についてのヒントを得ることができるかもしれません。(上記の記事からもいくつかの教訓が得られると思います)。
これまでの各地図書館の事例や対応について、集合知を求めたいと思います。
(追記)
北海道新聞が読者のリクエストに応えて、道内の人口上位15市に行った取材では、捜査機関による任意の情報提供依頼への対応に関する取材結果を公表しました。約半数の8市の図書館が場合によっては「提供する」と回答したそうです。
2008年の米国キンボール公共図書館の事例も記憶しておくべきかもしれません。
(いつか同様の事が起こったとき、私達が何を言うのかどのように振る舞うのかを考えておくために)
12歳の少女が行方不明となった事件を受けてバーモント州警察はキンボール公共図書館に利用者向けに提供している図書館のパソコンを全て提出するよう求めました。少女が行方不明直前に図書館のパソコンを使ってMySpaceで誰かと連絡を取っていたからです。
対応した図書館司書は「令状がない場合には,利用者に関する情報を提供しない」という図書館のポリシーに従い、警察の求めに応じませんでした。7時間後、警察は改めて令状を取り、図書館はパソコンを警察に引き渡しました。少女は後日遺体となって発見され、その後少女の叔父らが逮捕されています。
この事件が報道されると、インターネット上では図書館の対応を「官僚的な対応」「少女の命を救うことよりも図書館利用者のプライバシーを守る方を選んだのは図書館のエゴ」といった批判の声が広がり、図書館を攻撃する匿名のメールが多数キンボール公共図書館に届きました。
ひとつ希望があるとしたら、キンボール公共図書館の館長の言によれば、全米から非難のメールが届いたけれど、地元コミュニティは図書館の対応に称賛・感謝の声をあげていることです。