全集編纂のノウハウなどが書かれている本があれば
読書猿さん、こんにちは。
いつもTwitterや著作を楽しく拝見しています。
もしよろしければ、以下の内容を踏まえて、読書猿さんおすすめの本紹介をお願いしたいです。
私は、文芸作品の全集編纂作業を目標としている者です。内容は小説、詩、随筆などで、原語は韓国語、年代順に並べて編纂予定です。
当面は自費出版になるかと思います。
今は既刊の全集を色々と参考書にしているのですが、全集編纂のノウハウなどが書かれている本があれば読みたいなと思っています。
もし全集編纂にあたって役立つ本、論文、
または自費出版に関するおすすめの本があれば教えていただきたいです。
よろしくお願いいたします。
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全集編纂の専門図書は見つけることができなかったので合せ技でいきます。
方針としては、より一般な事項をあつかった参考書+全集編集の個別事例です。
まず文学全集を編む際の編集方針の立案や資料収集・整理について、出版編集の総合的なハンドブックが参考になります。例えば、日本エディタースクール編『標準 編集必携(第2版)』は、出版編集のノウハウを網羅した実務ハンドブックで、企画立案から原稿整理まで標準的な手順が整理されており役立つでしょう。
次に個別事例。
池澤夏樹が全巻個人編集を手がけた「世界文学全集」「日本文学全集」のケースについて、池澤氏自身が編集方針や選定基準について語った特集本『池澤夏樹、文学全集を編む』(河出書房新社, 2017年)があります。30ページにわたるロングインタビューや対談を通じて文学全集編集の具体的な考え方を知ることができます。
また、参考にしたいと思った文学全集の凡例(編集方針の解説)を読むことも有用でしょう。
全集を探すには、日外アソシエーツの「現代日本文学綜覧シリーズ」にある『全集・内容綜覧』や『個人全集・内容綜覧』が有用でしょう。
文学全集では原典テキストの校訂(テキストの校合・訂正)が重要な作業です。実践的知見を得るために、全集における校訂作業のケーススタディとして過去の全集での校訂方針や手法を研究した論考が参考になります。
たとえば増井典夫氏の論文「近代語資料における校訂について―坪内逍遥『小説神髄』の場合を中心に」(『愛知淑徳大学国語国文』22号, 1999年)では、岩波書店版『明治文学全集』におけるテキスト校訂の方針を具体例で検討しています。
法政大学国文学会の紀要に掲載された中丸宣明氏の「全集編集余話」(『日本文學誌要』88号, 2013年)も編集者の立場から校訂実務に触れた興味深いエッセイです。
注釈や解説の執筆については、注釈の技法や役割自体を解説した書籍が役立ちます。岩波現代全書の一冊である鈴木健一著『古典注釈入門-歴史と技法』(岩波書店, 2014年)は、古典文学研究に欠かせない注釈の意義や読み方、作成法を平易に説いた入門書です。
全集が備えるべき不可欠の要素に索引(インデックス)があります。
索引の作成については、専門的な解説書がいくつか出版されています。藤田節子著『本の索引の作り方』(地人書館, 2019年)は、著者・編者・編集者・索引作成の専門家に向けて、日本語書籍の巻末索引作成に必要な実務知識と技術を解説した好著です。また専門的な指南書として、日本索引研究会編『索引作成マニュアル』(日外アソシエーツ, 1983年)もあります。
もう少し専門的な指南書として、日本索引研究会編『索引作成マニュアル』(日外アソシエーツ, 1983年)もあります。やや古いですが、索引の原理から作成実務までを網羅した手引きで、索引の構造・機能、企画から作成手順、見出し語の選定と配列、コンピュータ活用、単行本索引・百科事典索引・新聞記事索引の各論まで詳細に解説されています
最後に、全集の自費出版を視野に入れる場合の参考書籍として、こちらも自主出版一般の参考書として布施克彦著『自分の本のつくり方―自費出版実践マニュアル』(湘南社, 2009年)があります。
より具体的なものとしては、高石左京著『個人出版(自費出版)実践マニュアル』(太陽出版, 2007年)もより実務寄りの指南書です。本書は「一般論ではなく、著者自身の経験に基づく本づくりマニュアル」であり、JPS出版局で実際に自費出版した際の具体的な費用見積や契約内容まで例示しながら、本づくりの実際を紹介しています。