これから独学で哲学を学んでいきたいのですが、どこから取りかかればいいのかわからず途方に暮れています。
質問
社会人です。
これから独学で哲学を学んでいきたいのですが、どこから取りかかればいいのかわからず途方に暮れています。
希望としては、ひとまず全般的な基礎知識をしっかり身につけたいと思っています。
それから、大学時代に知った『理性の公的使用・私的使用』の定義づけに惹かれていて、カントの哲学について勉強してみたいという思いがあります。
勝手がわからず曖昧で申し訳ないのですが、丁度よい本などがありましたらご教授願えませんでしょうか?
末筆になりますが『アイデア大全』のほう拝読いたしました。
濃密な知の連なりに、思考がどんどんアップデートされ拡張されていくような感覚がたまりませんでした。
『問題解決大全』もこれから拝読するのですが、とても楽しみです。
いま書かれているという御本も待ち遠しく思っております。
解答
哲学は、共通する基盤の上に積み上げられた体系というより、互いに参照し合いながら各々が独自に基礎を掘り下げたり概念を創設したりする挑戦の集まりなので、「これをやっておけばつぶしがきく」という共通の基礎がありません。
そのため哲学には標準的といえる教科書がなく、代わりにいろんな哲学の見本市として哲学史を学んだりします。一般向け哲学入門の多くもこれを踏襲しています。
なのでお勧めは、この状況を逆手にとって、いきなりラスボスに挑むことです。幸いにして関心をお持ちのカントはラスボス中のラスボスなので、優秀なサポートもまた存在します。
最初の一冊はちくま新書の『カント入門』がよいでしょう。数多くの涙を呑んできた哲学学徒が「私にもカントが分かった!」と歓喜した逸品で、カントへの入門のみならず哲学の優れた入門にもなっています。
「理性の公的使用/私的使用」はカントの『啓蒙とは何か?』に登場します。短い上に心に残る名フレーズ満載で、カントを読むなら最初にお勧めしたい小品です。光文社文庫の新訳が読みやすいでしょう。
訳者の中山氏もまた、カントの「自由」論を中心にしたカント入門を書いています(『啓蒙とは何か?』の結論、そしては理性の公的使用の条件こそ自由に他なりません)。