『トヨタの自工程完結』紹介
よくある問題意識として、日本は工場とかでは改善活動が盛んで、限界まで生産性を高めているのに、ホワイトカラーの現場はそうではない、というのがあると思います。
その問題に対する一つの解決策が書いてある本があります。
『トヨタの自工程完結』という本です。
著者はトヨタの現役幹部で、トヨタの生産現場とホワイトカラー部門に「自工程完結」という考え方を導入しました。
「自工程完結」とは「自分の工程」で「仕事を完結させる」ということで、作業の良品条件を厳しく規定して、各工程がそれを守ることで不良品を後工程に流さないという考え方です。
「"心がけ"に終わることなく、品質を工程で造りこむということを、より科学的に、論理的に、実証的に行う」と定義されています。
「このとおりにやれば、必ずうまくいく」という「やり方」を確立することです。
これによって生産性とモチベーションが同時に向上するそうです。
トヨタ生産システムの二大特徴は「ジャストインタイム」と「自働化」です。
「ジャストインタイム」は「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」という意味です。在庫や作業の無駄を減らす方法です。
「自働化」は「機械に善し悪しを判断させる装置をビルトインして、問題が発生した場合は現場の人間が原因を取り除き問題を解決すること」です。問題の発見を機械が行うので、人間は多くの機械を管理できます。(自働化以外の人間による検査ももちろんあります)
「自工程完結」はもともと後者の「自働化」を発展させたものです。そもそも不良品の発生をなくそうという考え方です。
各工程がこれを守れば不良品は発生しないという基準を作り、「工程」を「完結」させることです。
最後の検査に頼って不良品を見つけ出すのではなく、一つ一つの工程で良し悪しを判断しながら、最終的な品質を高めます。不良品を生み出すことを前提とするのではなく、不良品は作らない、正しくない結果は生み出さないことを前提としています。
トヨタの生産現場に「自工程完結」を根付かせるために「車の水漏れをゼロにしよう」という目標を立てて試行錯誤したところ、実際に水漏れの発生件数はゼロに近づいたそうです。(従来の5%以下)
車の水漏れはそれぞれのプロセスで水漏れに対して悪い事をすることで発生するらしく、さらに各工程で水漏れチェックするのではなく、最後にシャワーをかけてまとめてチェックするので、発生後の原因の特定も難しければ、発生件数をゼロに近づけるということなど不可能だと考えられていたそうです。
著者たちは水漏れに関する2000の工程をひとつずつ精査し、水漏れが起こらないような作業を定義し、作業を改善し、現場にそれを守ってもらうことで、水漏れを減らしていきました。
現場の人たちも、自分が正しいことをやっているという自信が持てるようになったので、モチベーションがあがったそうです。
著者は生産現場に導入して成果を上げた「自工程完結」の考え方を、2007年以降トヨタのホワイトカラー部門にも広げました。
ホワイトカラー部門で生産部門の工程にあたるのは、「意思決定」だといいます。「意思決定」が積み重なってアウトプットがでてきます。なので意思決定の精度を高めていくことが、ホワイトカラー部門における「自工程完結」だと設定しました。
ホワイトカラー部門の仕事は生産現場のような繰り返し仕事ではないという反発も受けましたが、根気強く広めたそうです。
本の中では、自工程完結に基づいた業務のゴールや作業条件の設定方法や、マニュアルの作り方や、他部署とのコミュニケーションの仕方などが語られています。
ポイントは下記のようにあげられていました。
[ポイント1]「目的・ゴール」をはっきりさせる
[ポイント2]「最終的なアウトプットイメージ」を明確に描く
[ポイント3]「プロセス/手順」をしっかりと考え、書き出す
[ポイント4]次の「プロセス/手順」に進んでよいかを判断する基準を決める
[ポイント5]正しい結果を導き出すために「必要なもの」を抜け・漏れなく出す
[ポイント6]仕事を振り返り、得られた知見を伝承する
スタッフ部門の自工程完結例としては、それまでかなりプロセスが煩雑だったカタログ作成を簡略化したり、後工程とうまくコミュニケーションすることで作業自体をなくしていったことなどが紹介されています。
トヨタの生産部門はすごいとよく言われますが、トヨタのホワイトカラーはすごいとはまず言われないことを、著者は長年悔しく思っていたそうです。
トヨタでもホワイトカラー部門では非効率な仕事の仕方が多かったというのが安心したというか面白かったです。
ホワイトカラーの仕事の進め方に関するヒントがかなり載っている本だと思います。
追記
日本のwikipediaに自工程完結の項目を立てました。