Bitwig AD2のステム化を便利にする例
追記: ブラッシュアップした記事を私のブログに書きました。
以下の記事も残しますが、タムのトラックがバウンスインプレイスできない問題が残っています。
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今回はBitwig Studio上で、XLN AudioのAddictive Drums 2のドラムトラックのステム化を便利化してみようと思います。
以下のような形で、打ち込みはAD2一本で行いつつ、パーツごとのステム化を簡単に行えるようにしてみました。
https://scrapbox.io/files/6887a026afe2bab514e0a87c.png
まず、AD2のパラアウトを設定します。
次に、各種ステムトラックを作成します。
ここでは Stems というフォルダトラックの中に配置しました。ちなみにStemsフォルダは後で使います。
キック、スネア、ハットはAD2側のパラアウトで1トラックずつ吐かれているので、それらを入力信号に設定すればOKです。
ここで、入力信号は(PRE)の方を使用します。POSTは別の用途で使うので。
なお、上のスクショではキック~タムまでですが、OH, Room, Busなども同様の手順で可能です。
タムは少し別のアプローチで作ります。AD2ではタム1~4がそれぞれ別のパラアウトになっているので、FX Layerと Audio Receiver でそれらを1トラックにまとめています。タム間のバランスはAD2内のフェーダーとPanでおおかた調整した上で、Fx Layer内のフェーダーやエフェクトチェインで仕上げます。なお、タムトラックの入力信号はなんでもよいです。
https://scrapbox.io/files/6887a16dd9e5a7d68d422879.png
出力先を切り替えるマクロを作る
この状態で各ステムトラックのモニターをONにすると、ステム側からも音が出ると思います。
一方で、AD2のトラックからも音が出ていると思います。これは各パラアウトのPOSTがそのままAD2に流れているからです。
このままでは音が二重に出力されてしまいます。
それならAD2側をミュートすれば…と思うところですが、ここで一工夫して、ボタン一つでステム出力とAD2単体出力を切り替えられるようにします。
というのも、打ち込みメインの作業段階ではステムミックスことはあまり気にしたくないからです。出音のバランスはともかく、AD2トラック側から全ての音が出てくれたほうが便利です。
「打ち込み時はAD2側から」「ミックス段階はステム側から」音が出るように、マクロでひと工夫します。
まず、AD2とStemsトラックを内包しているDRUMSトラックに Button マクロを作成します。
機能的に "STEM ON" という名前にしました。
そして、このボタンマクロを、AD2の各パラアウトのM(Mute)に1.000(上方向最大)に設定します。
これで、"STEM ON"がオンになると、AD2のPOSTが全部OFFになる…すなわちAD2トラックからは音が出なくなります。
MUTEを直接したくない場合は、AD2の後に Tool などで音量を制御させるとよいです。
https://scrapbox.io/files/6887ad5e7fb632f5e0854770.png
次に、"STEM ON"がオンのときだけ各種ステムから音が出るように設定します。
これはいくつか実装方法があるのですが、ここでは Tool デバイスのボリュームをボタンで変化させる設計にしました。
まず、ステムトラックを内包しているStemsフォルダに Tool を挿入し、ボリュームを -inf に設定します。
その後、"STEM ON"を、Toolのボリュームに対して 1.0 だけアサインします。
すると、"STEM ON"がONの時、ボリュームが0dBに戻るような挙動になります。
https://scrapbox.io/files/6887aed1c594940d00cac6d9.png
他の方法として、Stemsフォルダ のミュートを直接制御することでも実装できますが、この場合はStemsのメーターはボタンの状況にかかわらず常に出ているので、パット見OFFになっているかどうかがわかりにくくなります。
フェーダーを直接書き換える方法もありますが、ミックスでフェーダーが扱いずらくなるのでおすすめしません。
さて、これで"STEM ON'ボタンでAD2側、ステム側どちらから音が出すか切り替えることが可能になりました。
打ち込み時はオフ、打ち込みが終わったらオンにしてステム側からミックスできます。
さらに、"STEM ON"ボタンをプロジェクトリモートに設定しておくと、作業状況によらず一発で切り替えできるので便利です。
ステムの書き出し
AD2からの各種ステム出力をオーディオに書き出したいときは、ステム側からバウンスします。
タム以外はモニターを忘れずに。モニターを忘れると無音が書き出されます。
以下のように書き出す範囲を範囲選択します。
https://scrapbox.io/files/6887b0635c7dd4244f7c18e2.png
入力信号を直接キャプチャしているトラックはバウンスインプレイスでオーディオ化できます。今回においてはタム以外のトラックです。
注: Bitwig Studio 5.3.12 & Addictive Drums 2 2.7.0 (build 250428) においてこの方法でバウンスする場合、AD2のウィンドウを出しておかないと無音が出力されるようです。原因はよくわかりませんが、ウィンドウが出ていないと誤って計算効率化が働いてAD2の処理をスキップする…のかもしれません。
タム(Audio Receiverでルーティングしたトラック)については、バウンスインプレイスではなく通常のバウンスを選択します。バウンスソースはプリエフェクト以外(ここではプリフェーダー)に設定し、In-Placeを設定します。
in-placeを付けない場合、新しいトラックが出てきてしまいます。
また、Audio Receiver以外のプラグインが後段に入っている場合、そのエフェクトの効果を反映したくない場合は事前に切っておいてください。
https://scrapbox.io/files/6887b0d2d5bcbf394ebb717b.png
範囲選択で複数トラックを跨いでもまとめてオーディオ化できます。この範囲選択の仕様は本当に便利です。
今回タムだけは特殊ですが、それでもかなり便利にステム化できるようになったと思います。
また、オーディオ化した後はモニターは外してください。
https://scrapbox.io/files/6887b13424b97efec9292ad3.png
また、今回タムだけ Audio Receiverでまとめる仕様なので、一発で全トラックをバウンスインプレイスできないという不便が残っています。
どうしてもここをバウンスインプレイス一発、つまり入力モニター方式に統一したい場合は、タムをまとめるだけのバストラックを別途作成しておき、それをステムトラック側で入力信号に設定することで対応できます。
それではよきBitwig Lifeを。