12/14 16:29 新宿
新宿駅の東口喫煙所と西口の思い出横丁付近を繋ぐ半地下道。
彼は本を読んでいた、パッと見てホームレスにしては綺麗な風貌だなと思った。服や顔の髭がどうこうではなく、纏う雰囲気が。
「お写真撮ってもいいですか?」と聞いたら「どうぞどうぞ」とフランクに話してくれた。
やはり他と違う気がした。
何枚か撮ったあと近くへ寄り、「ありがとうございます」とお礼を伝えたら「ぼく役者をやってるんですよ」と彼は話し始めた。
普段は役者をしているが、この12月から社会勉強の為にここで生活を始めたらしい。2週間が経ち感じたことは、この通路には自分たちホームレス側と目の前をすぎてゆく人達の間に明らかな'見えない線'が引かれているということ。ただ、私が感じたようにホームレスではないと気付き話しかけてきた若者もいたらしい。タバコを渡してくれたり、お金を置いていってくれたり。周りのホームレス達はバックグラウンドについては話さず、彼も自身が役者であることは話していない。しかし、食事を配給してくれる場所があること、使っていいトイレがあることなど、必要な事は優しく教えてくれるらしい。
インスタとかやってますか?と聞かれたので私のアカウントを教えた。彼は携帯を持っていなかったから、手帳に私が伝えたIDを書いた。手帳にはこの生活を始めてからの日記が付けられていて、毎日湧き出てくる'こちら側の視点'が沢山書いてあった。
「いやほんとね、小説が書けるよ。そっちから見る世界と全然見え方が違うんだよ。」
「これ、僕が出る舞台のフライヤー。あげるよ、舞台挨拶あるからきてよ。新宿でやるし、来週なんだよね」
確かにそこには彼の写真が載っていた。
思いがけない出会い。
日頃考えてる事を話したり、彼の生活で気になる事を聞いた。
あと2週間、彼はこの生活を続けるらしい。
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