1.19 天城山の寄生植物と土佐の「やまとぐさ」
明治十六年に、時の東京大学御用掛で、植物学教室に勤務していた大久保三郎氏が、当時大学で発行していた「文芸志林」に、伊豆天城山で珍しい寄生植物を発見した、この種類は、多分ラフレッシア科のものであろうと発表されたが、私がその前後に郷里の土佐で見つけていたツチトリモチ属の一種の標品を大学に送ってみると、はたして私の考え通り同属のものであったので、バラノホラ・ジャポニカ・マキノという学名で発表した。 同じく十六年に矢田部博士発見のヒナノシャクジョウを土佐の故郷で採集し、露国のマキシモヴィッチ氏に送り学名を得たこともあった。明治十七年に私ははじめてヤマトグサを土佐で採集したが、その翌年に渡辺という人がその花を送ってくれたので、私は大学の大久保君と共に研究し学名を附し発表した。これによってはじめて日本にヤマトグサ科という新しい科名を見るに至った。この属のものは世界に於てただ三種、すなわち欧洲に一、支那に一、わが国に一という珍草である。