GDSのレイヤ変換でのチップ製造
(2019/1/24:akita11)
LSIの設計データであるGDS形式は、レイヤ(メタル配線、コンタクトなど)ごとに、レイアウトの図形(長方形など)が格納されています。
LSIの設計データのレイアウト図は、製造しようとしている設計ルール・製造プロセスにあわせて作成しますが、実は、場合のよっては、別の設計ルール・製造プロセスでも、少しの手直しで製造できる場合があります。その条件は以下のものです。
図形のレイヤの対応がとれる、または機械的に生成することができる。
設計ルールを満たしている、またま満たすように全体を拡大・縮小できる。
具体的な例を見ていきましょう。MakeLSI:で当初使っていた、ひびきの2umルールと、最近メインで使っているOpenRule1umルールで描いたnMOSトランジスタのレイアウトを設計してみてください。
この両者をみると、使っているレイヤ番号・名前は違うものの、似たような図形であることがわかります。またひびきの2umルールのnMOSトランジスタを、全体を1/2に縮小すると、ちょうどOpenRule1umルールのnMOSトランジスタになりそうです。
両者の設計ルールをよくみて、使われているレイヤの対応表を調べると以下のようになります。
table:ひびきの2umとOpenRule1umのレイヤの対応
レイヤの意味 ひびきの2um(レイヤ番号) OpenRule1um(レイヤ番号)
Nウエル Nwell(1) Nwell(1)
アクティブ Active(4) Active(3)
ポリSi Poly(7) Poly(5)
N選択 Nselect(8) Nselect(19)
P選択 Pselect(9) Pselect(18)
コンタクト CNT(10)/CNP(11) Cont(7)
メタル1 Metal1(12) Metal1(8)
VIA1 Via(13) Via(9)
メタル2 Metal2(14) Metal2(10)
Gladeや、他の多くのCADツールでは、GDS読み込み・書き出し時にレイヤを変換させる機能があります。(Wgexにも、付属のgds2.exeに同様の機能があります)これを使って、GDS読み書きのときに、上記のようなレイヤ変換を行うことで、別の設計ルール・製造プロセスへレイアウトデータを変換できます。
なおその際、変換後のレイアウトデータが、変換対象先の設計ルールを満たしているかの検証(Design Rule Check; DRC)は必要です。GDSの読み書きには、全体を拡大・縮小する(scale)機能がありますので、場合によっては、DRCを満たすように、読み書きの時に全体を拡大・縮小することになります。
その際、コンタクトやVIAは、既定のサイズがある場合が多いので、必要に応じてスクリプトを描くなどして、サイズを調整します。なおOpenRule1umでは、コンタクトやVIAは、ダミーセルを使うことになっているので、そのダミーセルのみを、設計ルールを満たすように差し替えればOKです。
ちなみにOpenRule1umで設計したレイアウトデータをPhenitec 0.6umで製造するときも、この方法を使っています。