2ndまでに向けて何をしようとしているのか
このようにして文章やらを吐き出しているのはもちろん1stで作った波、アテンションを落とさないためでもあるが、一方で次に出す作品群がどういう意図を持っているのかの前提を理解してもらいたいためである
1stをリリースする決断に踏み切れたのは実際には2ndが制作されたことによって1stが相対化されたから、とも言える
実際問題熱心に我々の活動を追ってくれている人にしかこのような文章は読まれないものと思っているが、一方でそういう人々だけがまず読んでくれることを願ってもいる
まず大枠の話として我々がエレガンスを至高していること
これはある意味では恒久的な価値観なので実際問題エレガンスに到達できているかはさておき、我々は常にそこを目掛けて活動しているということ
それ以外に意味はないし、そうでない作品を自分らが聞くこともない
こういうスタンスであることはしっかり明言しておいても良いかもしれない
もう一方でエレガントな音楽を作ることには様々な困難が存在していること
例えばエレガントな音楽を作るには時間がかかること
そして我々が言うところのエレガンスは新しい形式を伴っており、それに付随して正しさを判断することが難しいこと
これらが合わさった結果として、エレガントな作曲は簡単に言えば売れるかどうかも全く分からん割にやたらとリソースを食う生産となる
これが実際問題かなりクリティカルな課題になる
我々としても楽曲それ自体の収益だけで生計が賄えるとは思っていないが、少なくとも多少は聞かれないとその価値が人に届かない
つまるところ届くべき層には届いてほしいと考えている
届くべき層として想定しているのは
1.独特な構造を持った音楽に美的な資質を見出せる人
2.アティチュード込みで音楽に対する美的判断を行う人
トレンドがどうとか名盤がとか言ってる層を拒否するつもりもないが、聞いてもらえなくても大して問題はない
のだがアテンションエコノミー的な状況も踏まえると自分らの生産速度の遅さはかなり弱い
ぶっちゃけ現代最強なのは依然としてヒップホップで、結局分業かつ構造的にもシンプルな音楽の方が製造コストが低い
じゃあどうする、という話で 我々が採用するのがバージョニング概念の導入になる
我々が直面した課題
そもそもとして我々がマーケティング的な行為に対して過剰なまでにめんどくさがる部分があるのは否めない
端的にいえば曲がそこそこ売れて展開ベクトルが勝手に増えて勝手にマーケがうまくいく、が理想ケースではあるが、そんなうまくいかない
それに加えて、アイキャッチ要素のあるアプローチが異常に少ない
正味DAWの画面くらいしかない
となると曲を作って出すしかない
のだが曲を作るのが滅法遅い
マジで気合い入れても1曲に一ヶ月はかかるし、それはサステナブルではない
なので結局埋もれる
アルバム作ろうと思ったら最短で1年はかかる上に、その間特に出せるものもないわけでただただ市場から忘れ去られる
まあ言ってしまえば完璧主義的なアプローチを取る人間にはかなり不利な状況ではある
フランクオーシャン的な存在になれば何をやってもどうにかなるが
無闇に聴衆のことを想定して過剰にフレンドリーな設計に倒してしまったりすることもある
むしろ未分の状態でリリースしても良い
それが面白い可能性がある
リリース前にオプティマイズしてしまうことが音楽を真に音楽であることから遠ざける
音楽的アプリケーションに接近してしまう
あるいは期待効果を果たすための作品にしかならない
例えばアーティストがいつ完成したと感じるか、みたいな話をしている
その実感はわかる
が、ある曲に関してはその形態があまりにも既存の音楽の形から外れているため、所謂参照がしづらく完成したと判断することが難しい場合がある
それはまあ自分が手繰り寄せる能力がない可能性もある
一旦バージョニングはトライアル的に回す
なので割とガチなものと見做されるよりも暫定的なトライ&エラーの1手法くらいに認識してもらう、で良い
そこに権威づけが必要なのであればそれもそれとしてレーベル化する
レーベル化した場合はマジでこいつの活動は多くの人に見てもらうべき、聞いてもらうべきだ、と感じるやつだけを採用する
ある種の新卒採用に近いかもしれん
音楽的な意味での弱者にも救済は必要
これまで公開した1,2章の内容にて『Double Bind』が実質的に凍結状態に陥ってしまったことについては説明した。
その状態は少なからず苦しいものであったように思うが、一方で我々はエレガンスという軸を獲得したことによって、制作それ自体には前向きになれていた様にも思う。
その結果、一旦『Double Bind』は保留してそれ以降の作品を作り進めることに集中し始めたのが2023年の初め。そこから2年弱が経ち、2枚目のアルバムが現在完成間近になっている。
2枚目のアルバムについては当然そちらがリリースされてから詳細に説明すべき箇所は説明する予定ではあるが、ある意味では1stの内容を補完するような内容になったと我々は感じている。
この2ndの内容に納得感が生まれていくことを通して我々は作品を完成させ、かつ人に届けることへの現実味を再度取り戻して行ったように思う。一方で2ndの制作期間、大まかに言えば2ndとしての目線が定まったのが2023年の夏頃からだと思うが、2023年夏から現在にかけてまで実際問題随分と時間を要してきたのは事実である。この時間がかかるということが思いがけず課題になるな、と考えるようになった。
我々がやたらと遅筆であることは認める一方で、最も制作における時間がかかる工程は大きく分けて二つ。作品の焦点を絞り込むことととそれに即してアレンジメントを精緻化していくことである。この作業はどちらかというとすぐさま答えが見えるというよりも作業を続けていく中で言語化されていくことが大半であるので、「まだ見えていない状態」であっても焦りすぎてはならない。
そこを作業の前提に組み込むとまず楽曲をコンスタントにリリースできないという前提が活動の中に生まれてしまう。
正味我々の作品がどれだけ良かろうと(あるいは悪かろうと)