メイド・イン・ジャパンはデモクラティック
ユニクロが海外で人気の秘密は、実は、それが「デモクラティック」だと認識されているところが大きいんじゃないかと思うんです。というのも、欧米のファッションって基本的に、価格帯がそのまま階級のヒエラルキーに対応していて、本質的には階級格差というものと強く結びついているように思うんですね。ところが、日本人にとって、洋服というものはデモクラシーという概念と同時に入ってきたものなので、洋服を着ることが即、それまでの身分制度からの解放を意味していたわけですよね。なので、ハナから日本の服はデモクラティックであり得たんだろうと思うんです。ジル・サンダーは、それをしれっと「民主的」ということばで価値づけしたわけですが、それが価値であるということは、そのあり方が逆に言えば稀なものだからなんですよね。
ところが、日本人自身はあんまりそのことがわからないんですね。というのも一億総中流を目指して経済成長した国では、クルマも家電もそれこそ洋服も「みんなに行き渡る」ことがおそらくは大事とされてきたからで、そこでは金持ち向けとか貧乏な人向けといったセグメントが存在しないんですよね。そういう設定をすることがはしたないみたいな感覚すらあるような気もします。だから、なんとなく、貧しい人も着るけど、金持ちも着るという状況設定が自明のものとしてあるように思うんですが、これが欧米に行くと、ちょっとした驚きになるわけですよね。