数の文化第4回
面積には加法性がある
前回はピック値の加法性を確かめた
ピックの公式が部分に適応できるなら、全体にも適応できる
最小の多角形は三角形
格子多角形をいくつかの格子三角形のみに分割できる
弱いピックの公式
三角形についてのピックの公式
ピックの公式の証明方針
加法性が成り立つので、弱いピックの公式を考えて帰納的にピックの公式を証明できる
部分から全体への適応
実は3角形についてのピックの公式を示すのも、それほど簡単ではない
dala Verbergのアイディア
一般の三角形のピックの公式を考える前に特殊な場合を考える
単位正方形の場合
面積=1
ピック値=I+B/2-1=1
I=0
B=4
単位正方形の場合、面積とピック値が完全に対応していることがわかる
加法性により、単位正方形をつなげた図形でもピックの公式が成り立つ
例
長方形
長方形を対角線で分けた直角三角形の場合
直角三角形1と直角三角形2に分ける
直角三角形1と直角三角形2は合同
合同の定義ってなんだっけ?
3辺の長さが一致していることと今回は考えればよさそう
合同なら面積が一致しているの証明が気になる
合同ならピック値が一致していることは示せそうだけど内点とか境界点がそれぞれ一致しているとは限らなくないか
座標平面上どこに移動させても合同なので
合同であるという条件じゃなくて、長方形から分割した直角三角形であることが効いてくるのか
その直角三角形の1つについて面積とピック値が一致することを示したい
面積について
直角三角形1の面積と直角三角形2の面積の和は長方形の面積の和になる
直角三角形1の面積と直角三角形2の面積は等しい
直角三角形1と直角三角形2は合同なため
よって、直角三角形1の面積の2倍は長方形の面積と等しい
ピック値について
直角三角形1のピック値と直角三角形2のピック値の和は長方形のピック値の和になる
直角三角形1と直角三角形2のピック値は等しい
それぞれの内点と境界点の個数が一致している
同じ長方形から分割したから?
よって、直角三角形1のピック値の2倍は長方形の面積と等しい
長方形の面積と長方形のピック値は等しいので…
長方形の面積=長方形のピック値
直角三角形1の面積の2倍=直角三角形1のピック値の2倍
直角三角形1の面積=直角三角形1のピック値
2で両辺を割る
証明完了
一般の三角形Aについて
Aの面積をS_Aとする
Aのピック値をP_Aとする
Aを囲む最小の長方形をRとする
Rは0より大きいS_Aと、少なくとも1つは0より大きい面積を持つ直角三角形S_B,S_C,S_Dに分割できる
S_R=S_A+S_B+S_C+S_D
面積の加法性より成り立つ
P_R=P_A+P_B+P_C+P_D
ピック値の加法性より成り立つ
S_R=S_P
Rは長方形であるから
0=S_R-S_P=(S_A+S_B+S_C+S_D) - (P_A+P_B+P_C+P_D)
=(S_A+S_B+S_C+S_D) - (P_A+P_B+P_C+P_D)
=(S_A-P_A)+(S_B-P_B)+(S_C-P_C)+(S_D-P_D)
面積並びにピック値は0以上であるから、この等式が成り立つには全ての項で0である必要がある
S_A-P_A=0
S_A=P_A
となる
拡張・応用
ピックの公式の多面体版がある
定理(拡張ユークリッドの互除法)
p,qが互いに素であるならば、
ap-bq=1を満たす整数a,lがある
この定理をピックの公式で証明する
拡張ユークリッドの互除法の証明
xy座標に(0,0)から(p,q)への線分を引く
線分上には格子点はない
p,qが互いに素なため
線分を左にずらして最初にぶつかる格子点の座標を(l,a)とする
原点(0,0)、(p,q)、(l,a)からなる3角形には内部に格子点がない
I=0,B=3であるから面積はピックの公式より1/2
ピックの公式を使わずとも面積は求められる
直角3角形(0,0),(0,q),(p,q)を考え、4つの図形に分割する
直角三角形
(0,0)、(0,a)、(l,a)
(p-l,q)、(l,a)、(p,q)
面積1/1の三角形
(0,0)、(p,q)、(l,a)
長方形
(0,a)、(0,q)、(l,q)、(l,a)
直角3角形(0,0),(0,q),(p,q)の面積は1/2pq
長方形(0,a),(0,q),(l,q),(l,a)と、直角三角形(0,0),(0,a),(l,a)と、直角三角形(p-l,q),(l,a),(p,q)と、面積1/2の三角形(0,0),(p,q),(l,a)の面積は直角3角形(0,0),(0,q),(p,q)の面積と一致する
長方形(0,a),(0,q),(l,q),(l,a)はl(q-a)
直角三角形(0,0),(0,a),(l,a)は1/2al
直角三角形(p-l,q),(l,a),(p,q)は1/2(q-a)(p-l)
1/2=1/2(ap-lq)が成り立つ
去年の質問
多角形の3角形の分割が必ず分割できるか
これ気になってたik.icon
nについての帰納方でできる