佐々木友輔
表層批評は画面内の特定の要素以外の多くのものを見ないことによって成り立っているということは繰り返し言っていかなければいけない。
何を「よく見る」かの力点が違うだけで、誰もが自分の選んだものを「よく見る」代わりに別のものを見落としている。
大切なのは「よく見る」ことが必然的にそれ以外の膨大な「見ていない」を伴うことを自覚し、その事実の前に謙虚になることであって、力点の異なる「よく見る」を実行している他者に対して「お前は見ていない」と見下すことではない。
自分自身の「よく見る」にそぐわない作品を切り捨てるよりも、その作品のポテンシャルをもっとも引き出せる「よく見る」を実践できるように自分自身を変えていく努力をするほうが、鑑賞態度としては真摯だと思う。