複合現実による災害想定没入体験アプリDisaster Scopeの開発と避難訓練における活用
2011年の東日本大震災などにおける教訓から、災害発生時において迅速かつ的確な退避を可能にするための対策が求められている。小・中学校や自治体では、防災講話や防災イベントにおいてハザードマップや被災地の写真を用いた講話や防災パンフレットの配布を行い、各地域に潜在している被災リスクの周知が進められている。リスクを把握するためにはハザードマップの中から自宅を探し出し、凡例を見ながら自宅や学校周辺の侵水深を読み取り、その数値を基に被災状況をイメージしなければならず、小・中学生などの低年齢層では容易ではない。そこで本研究では、スマートフォンと紙製ゴーグルを用いて、浸水や火災による煙の発生状況を現実風景に重ねてCG(コンピュータ・グラフィックス)で表示し、没入体験できる複合現実アプリを開発する。体験者が被災リスクを正確にイメージし危機感を実感できたかを調査し、有用性と今後の課題を検証する。本システムはスマートフォンと廉価な紙製ゴーグルのみを用いるため、調達・設置・運用コストが低く、多人数同時に体験可能であり避難訓練で活用できた。3D奥行きセンサを搭載したスマートフォンを用いると、1m以下の水位の浸水や室内の煙充満の様子のリアルな実感が可能になった。小・中学校における避難訓練や防災イベントにおける本システムの実用と評価の結果、危機意識の向上に有用であることが示唆され、運用上の課題が明らかになった。
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