第1回/章/夢の中へ
timetide.icon
※もともと自分もココアを飲みたがっていた感をどこかで出す
目が覚める。そうではなく、ここが夢の中であることに気づく。ココアの味が残っている
夢の現実感の描写。嗅覚や味覚がないというよりも、そういうことに意識が回らない。自分を見ている感じ
arika.iconここ印象的に書けるとすごく締まるかも
見たいものが見られるというから、好きに動き回れるのかとも思ったが、そういうわけでもない。自分がどうしたいかというイメージを維持し続けるのは意外に難しく、最初は歩くのにも難儀する。(明晰夢の感覚をイメージして描写)
クスリっぽい描写あったほうがいい? やったことないから分からん
ひとまる.iconなくてもよさそう
arika.icon普通はない
淡い光景のような何かがいくつも見える (知り合いの顔もある)
死んだ友達と一緒にいる光景
いつも隅のほうにいる同級生が人間関係の中心でうまくやっている光景
ひとまる.iconそんなぁ
病院で見かけたことのある人 元気になっている
誰の夢か知らないが、ココア工場が存在しない町。みんな今よりも自由に生きているように見える。
ココアを飲んだ人たちの夢であることに気づく。みんな深刻な喪失を抱え、欠落を埋めるように夢に浸っている
※この次でセイカはぜんぜん深刻じゃなかった、となる伏線
セイカはどこだ? と探す
セイカにもこういう夢に頼らなければいけないような喪失があったのか? 自分はそれに気づくことができなかったのか? と自問自答
いくつか見てまわるうち、ひときわ????な夢が目の前を横切っていく
→セイカだ! と気づき、飛び込んだところで章終わり
ひとまる.icon 入るところまでやってくれると助かります
timetide.icon了です
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まどろみの中、舌先を甘味がかすめる。それを頼りに意識が戻っていく。枕もとのスマホを探ろうとして、ここがベッドではないことに気づく。チョコレート。違う。この舌に絡みつく甘ったるさ。ホットココアだ。
跳ね起きる。そもそも寝転がってすらいなかった。二本の足で立っているような気がするけれど、どこに立っているのかも判然としない。見えないわけではなくて、よく分からない。いちばん強い感覚は、ココアの甘味と芳香だ。夢の中では味覚や嗅覚がないような印象があったけど、これはこれで夢っぽいかも、という気はする。
これが私の見たい夢なんだろうか。そのわりには、あんまりにも曖昧模糊としている。自分がどこにいるのか目を凝らそうとするけれど、どうにも意識が集中できない。茶色っぽいマーブルのイメージ。ココアの海? という想像が浮かんで、すぐに馬鹿らしいと思う。とりあえず歩こうとしてみても、まず右足を踏み出して、そして左足を踏み出す。そんな単純な行動がどうにもうまくいかない。前に進むというイメージをうまく保てないのだ。自分の手足が感覚的に自分のものでなくて、リモコンか何かでむりやり操作している感じ。思ったよりも居心地が悪い。
人の声が聞こえた。今度は簡単に意識が向いて、吸い寄せられるように体が動いていく。ぼんやりと、何かが見える。同じ科の杉山だった。あんまり同級生といるところを見たことのない、地味な人だ。同級でオタクっぽいグループはいくつかあるけど、そういう連中ともあまり絡まない、印象の薄い人。その杉山が、なんでか人だかりの中心になっていた。あれは多分前期試験の過去問をクラスに共有しているところだ。それを知り合い伝いに回していく中心に、杉山がいる。でもたしか杉山、過去問の存在を知らなくて赤点だったんじゃなかったか。
杉山のことはどうでもいいので、私は周りを見渡す。なんとなく周りを見渡すという行動ができるようになっていた。澱みのようなものが無数に見えるのだ。そのそれぞれの中に、誰かがいる。夢特有の理屈のない納得感で、私は澱みを覗き込む。あの人はたしか森永の入院する病院で見かけた人だ。何度かすれ違ったが、とにかく顔色の悪い人だなと失礼なことを思っていた。その人が、今は異様に黒光りして山男みたいになっている。というか地元の有名人みたいな枠で顔を見たことのある登山家だった。
別の夢に顔を突っ込むと、私の知るこの町があった。やたらホットココアの出店とか看板が出ていて、そこだけが現実と違う。そういえば、昔この町には有名なココア工場があって、ちょっとした城下町みたいな栄え方をしていたと聞く。今では全国レベルでもかなり規模を縮小してしまって、とりあえず銘柄は知っているくらいの飲み物。その事業が撤退せずに栄え続ける、これはそんな誰かの夢なのだろう。
ホットココア。そう。これはホットココアを飲んだ人たちの夢だ。そういうことなのだ。みんな、もう手に入らないと知っている何かを求めてホットココアをやってしまう。何かを失って、諦めてしまった人のもとにあの子は来るのだ。(←timetide.iconそう?)森永もそうだったのだろうか。いつも馬鹿をやって、私を振り回す。悩みなんてある風には見えなかったけど、それは私が森永のことを何もわかっていないからだ。だって、いつもあんな風だし、べらべらと私が寝不足になるまで喋りとおすくせに、肝心なことはきっと言わない。私だって何も聞かない。だって、そうやって馬鹿みたいに振り回される距離感のことを楽しいと思っていた。
「私もつらい現実から逃げたいよ」のび太みたいなこと言ってんじゃないよ、と私は答えた。あれは森永の悩みの吐露だったのか? ちゃんと聞いてあげなかったから、森永は夢の中なんかに逃げてしまったのか? 無性に納得いかない気持ちになり、私はココアの夢を飛び回る。ブラウンのマーブル模様の、おおざっぱでふざけた夢。叶わない夢を叶える幸せだけどどこか辛気くさい光景をかきわけて、私は森永を探す。
突然、わけの分からないオブジェが司会を横切る。なんだあれ。蟹? 振り向くと謎の賑やかな発光。ぐちゃぐちゃしたものが光学的にありえなさそうな混ぜこぜの光を放っている。雑多でごみごみした奇っ怪な音。ココア以外の匂いを初めて感じた。ここが夢の中だからとかそいいうことではなく、世の中の摂理を外れたものがそこにあった。
森永じゃん。私は確信する。あんなふざけたもの、森永以外にありえない。私は森永の夢を追う。森永の夢はUFOもかくやという馬鹿みたいな軌道でビュンビュン飛び回って私を振り切ろうとする。夢が逃げるな! 歩くことすらできなかった最初が嘘みたいに、私は森永を追う。森永を追う私を、夢の中で現実にする。その姿だけは、本当に簡単にイメージできた。追いつき、手を伸ばす。
「森永! ばか、待て!」
わけの分からないぐちゃぐちゃに、私は突っ込んでいく。