第1回/章/不思議なココア
〇二人の部屋
ココアを飲んでいる森永
森永の説明。
森永のもともとのキャラクターの説明。破天荒、キャッハー。
破天荒エピソード、行方不明になったと思ったら、北海道まで蟹を食べに行ってたり、ラーメン食べに行こうって誘われたらそのまま新幹線に乗って博多まで連れていかれたり。
ひとまる.icon↑ここ好き
そんな彼女が今、ココアに嵌っている。
おやすみなさい、と布団に入る
寝息を立てて笑っている森永
それを見てる小岩井
ひとまる.icon↑ここの寂しさみたいなものをどう表現するかが大切そうに思いました
小岩井、心の声で、ココア売りの少女の存在の説明。
楽しい夢が見れるという噂。
飲みすぎると目が覚めなくなるという噂。
ココア、ちょっと自分も興味があって、してみたいと思うけれども、同時に怖くもある。
arika.iconここは自分が葛藤として受けなければならないところ。
その後どんどんココアに嵌っていく森永の変化。
学校の授業もさぼりがちだし、空き教室でも寝てる。
さすがにどうかと思う。
arika.icon小岩井、常識人
そしてある朝、目を覚まさない。また寝過ごしているのかと思ったら、夜になっても寝てるみたい。
ゆすっても起きない。
これはただ事ではないと思う。
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「眠れない夜はやっぱりココアね」
「あんた、いつもぐっすりお休み三秒でしょうが」
森永はそういって空っぽになったココアのカップをベッドわきの机の上に置いて布団に潜り込む。
3,2,1、ほらもう寝息を立てだした。
森永セイカはルームメイトだ。大学の寮の10畳の部屋を二人で分け合ってる。正直とても騒がしいルームメイトで、ほとほと世話を焼かされている。
とにかく、行動が突飛なのだ。
ある日、突然いなくなったと思ったら、巨大な蟹を持って帰ってきて
「北海道まで蟹、密漁してきた!ロシアの船怖かったよ!」
とか
「まきばー、ラーメン食べに行こうぜ~」
と誘われて、まあ、ラーメンならいいか、と思ってついていくと、気が付いたら新幹線に乗って、博多まで連れていかれた、っていうこともある。
そんな彼女が今、ココアに嵌っている。
「まきば、ココアって言ってもこれはただのココアじゃないんだな。なんと、あの『ココア売りの少女』のココアなんだぞ」
『ココア売りの少女』。最近学部や街で流行ってる都市伝説だ。その少女は心の底から強く『望んだ夢がみたい』と願っている人のところにしか現れない。そして、彼女の売るココアは『望んだ夢が見られるココア』で、そのココアを飲むと望みの夢が見られるというのだ。荒唐無稽だ。
森永は、そんなココアをどこからか手に入れてきて飲んでいる。それも1回だけでなく何回も。もし本当にその少女から手に入れているとしても、よくそんな得体のしれないものを飲めるな、と思う。
でも、もし、本当に。自分の願った通りの夢が見れるというなら、それが例え夢でも、望んだ景色が見れるというなら。私はどんな夢を望むのだろう。
「ふひひひ」
ベットで森永がだらしのない笑い声をあげる。どうやら楽しい夢を見ているらしい。布団を蹴り上げて、口の端からよだれが垂れている。汚い。おせっかいだと思ったが、布団を直してかけてやった。
最近の森永は寝てばかりだ。前みたいに突然くいだおれ人形をどこかから持って来たり、市街地を走る暗渠の探検に付き合わされることもない。おかげでとても、平和な毎日だ。
「ほら、森永、起きな!1限目始まるよ!」
「すー、すー」
声をかけても、森永は寝息で返事をするばかり。ゆすっても起きる気配がない。お前、そろそろ単位やばいんじゃなかったのかよ。もう知らないぞ。
私も単位を落とすわけにはいかないので、森永を置いて、授業に出かける。
時間ギリギリで教室に滑り込む。語学、出席してるのは大体いつものメンバーだ。ただ、いつも前の方の席に座っている杉山がいない。一生懸命なのに要領が悪くて、いつも赤点ギリギリ。出席だけは頑張っていたのにな、あいつ。他のみんなは後ろの方の定位置に座って、教授に聞こえないようにボソボソと話をしている。彼女たちの会話を聞こうと思っていたわけではないが、自然に耳に入ってきた。同じ学部の子の噂、悪口。そして、『ココア売りの少女』の都市伝説。彼女たちの話してる話は、ほとんど森永から聞いた話と一緒で、本当にこの話広まってるんだなあと思った。でも、森永から聞いた話と違うところが一つだけあった。
「……だから……なくなっちゃうんだって」
「え?なに?」
「そのココア、飲みすぎると目が覚めなくなっちゃうらしいの。自分の好きな楽しい夢の中で、一生出られなくなっちゃうんだって」
「えーでも、別にいいじゃん、ずっと楽しい夢なんでしょ?私もつらい現実から逃げたいよ」
「何のび太みたいなこと言ってんの」
…目が覚めなくなる?
私は教室を飛び出していた。教授が呼び止めるのも聞かずに。
「おい!起きろ!起きろ森永!」
胸倉をつかんで森永の頬を思いっきりひっぱたく。なんどもなんども。それでも、森永は寝息を立てたままだ。気持ちのいい夢を見ているのか、口の端で薄く笑ってさえいる。
「起きろ!起きろってば!森永!森永セイカ!」
ゆすって、つかんで、転がして、でも何をしても起きない。
「こんな、夢の中に逃げて、あんたらしくないよ、起きろ!」
いつからこんなだったんだろう、なんで私は気付かなかったんだろう。森永が、このまま起きなかったらどうしよう。
鼻の奥が熱くなる。森永をつかむ指はしびれて感覚がなくなっていた。