舞妓さんちのまかないさん
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紹介
もうすぐ春です。
ここは京都のど真ん中にある花街。舞妓さんたちが共同生活を営んでいるのは「屋形」と呼ばれるおうちです。 青森からやってきたキヨは舞妓さんを目指していたけれど、今は屋形のまかないさんとして舞妓さんたちの毎日の食事を作っています。一方、キヨの幼なじみのすみれ(すーちゃん)は、仕込みさんという下積み期間を経て、晴れて舞妓さんになり、お稽古にお座敷にと毎日を忙しく過ごしています。
キヨたちが京都に来てもうすぐ1年。屋形には新人の仕込みさんがやってくることになりました。初めて「妹」ができることになり、すーちゃんは緊張を募らせます。さて、新しい仕込みさんはどんな子なのでしょうか…?
華やかな花街の舞台裏、普通の日のごはんを通して、温かな人間模様が描かれるお台所物語。
『舞妓さんちのまかないさん』を読んだのだが、主人公のキヨちゃんが可愛くてとてもよかった。同期の子との関係が何気に百合みがあって『新米姉妹のふたりごはん』に通じるものがある。キヨの格好(カチューシャ?)は『魔女の宅急便』のキキとか『彼女、お借りします』のルカを連想したかも(違うけど 冒頭の数巻を読んだ感じ、キヨの内面をどう扱っているかという部分が気になったりした。例えば、キヨもまた舞妓になりたいと思って、京都に来たのだが、それはすーちゃんに憧れて「すーちゃんと一緒にいたい」から来てしまったのか、「すーちゃんのようになりたい」と思ったが、それは挫折したのかという部分で、本編をみる限りではキヨは自己嫌悪に囚われることなく、ただすーちゃんが「すごい子」だということを心から喜んでいるように描かれている。
「リズと青い鳥」でも似たようなテーマが扱われていたが、「才能と凡人」という枠組みをこの作品では感じにくいように思ったのは、キヨちゃんが同じ土壌で戦っていないからだ。純粋に友人の成功を喜ぶことのできることがキヨの美点であるように思うが、例えばキヨがもし料理の才能を見出されなければ、そのまま実家に帰ることになっただろうし、もしそういう展開になった時に、自分の不釣り合いさに悩んだりすることになったりするのだろうかということは考えてしまった。もし、そういうことに悩まないのならば、たまたま身近に優秀な人がいて、その優秀さを自身が早くから理解していたという他者への勝手な期待の投影に他ならないので、たまたまこの文脈では褒められるような生き方ができていただけではないかなとか。