戦闘妖精・雪風
南極に出現した超空間通路から侵攻してきた謎の異星体ジャム。人類はその先鋒を撃退し、逆に超空間通路の向こう側に攻め込み、そこに存在した惑星フェアリィに橋頭堡となる基地を築いてジャムの侵攻を食い止めていた。設立初期には選び抜かれた精鋭によって構成されていたフェアリィ空軍 (FAF) だったが、長引く消耗戦にエリートの損失を嫌った各国は、やがて犯罪者や精神疾患者といった社会的不適合者の中から才能を持つものに訓練を施し、FAFに送り込むようになる。
そのFAFの主要基地の一つ「フェアリィ」に属する戦術戦闘航空団特殊戦第五飛行戦隊、通称ブーメラン戦隊は、社会不適合者のなかでも他者に関心を持たないという心理傾向がある人間ばかりを集め、高性能な戦術戦闘電子偵察機「スーパーシルフ」を擁する対ジャム戦における戦術電子偵察部隊であり、たとえ目前の味方を見捨ててでも敵の情報を持ち帰る事だけを要求される特殊部隊だった。
極めて高度な中枢制御体を搭載し、完全自律制御による高度な戦術判断や戦闘機動を可能とするスーパーシルフ。その3番機 (B-503)、パーソナルネーム「雪風」のパイロット、深井零は、雪風を自らの半身と偏愛し、雪風以外のあらゆるものを「関係ない」と切り捨てるまでに雪風が全てと信じていた。一方、特殊戦の前線指揮官で零の唯一の友人でもあるジェイムズ・ブッカーは、ジャムの戦術やそれに対する雪風の振る舞いを疑問視し、「この戦いに、人間は必要なのか?」との疑念を抱く。
激化していくジャムとの戦いの中、零は雪風だけを信じフェアリィの空を舞い続ける。しかし、戦いは人類には不可知の存在であるジャムと、人類が生み出した戦闘機械集団との戦争の呈を見せていく。そんな中で零と雪風は、単なるパイロットと愛機という関係を超越した「複合生命体」と呼ぶべき存在へと変化していく。そしていよいよ、FAF基地へのジャムの総攻撃が始まった。
一方、地球の著名なジャーナリストで、零やブッカーとも親交のあるリン・ジャクスンは、ある人物からの手紙を受け取る。その内容は「ジャムの代理人として、人類に宣戦布告する」という衝撃的なものだった。