シグルイ
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江戸時代初頭、天下の法に反して駿河城内で挙行された真剣御前試合で対峙したのは、片腕の若武者と盲目の天才剣士だった!! 残酷無惨時代劇!! 寛永6年9月24日、駿府城内で御前試合が行われることとなった。御前試合は、慣例として木剣を使用することになっているが、周囲が諌めたにもかかわらず、駿河大納言・徳川忠長の命により、今回は真剣を用いることが決定され、剣士達による凄惨な殺し合いが幕を開ける。その第一試合、隻腕の剣士・藤木源之助の前に現れた相手は、盲目・跛足の剣士、伊良子清玄だった。まともな試合ができるかどうか危ぶむ周囲の心配をよそに、伊良子は奇妙な構えを取る。刀を杖のように地面に突き刺して足の指で挟み、体を横に大きくのけ反らせるように捻るという構えに群衆が唖然とする中、対する藤木はまったく動じることなく刀を抜き放ち大きく構える。両剣士には浅からぬ因縁があった。
7年前のある夏の日。「濃尾無双」と謳われた剣豪・岩本虎眼が掛川に開いた「虎眼流」の道場に、伊良子が道場破りとして訪れる。伊良子は相手を務めた藤木を骨子術によって破るが、次に相対した師範の牛股権左衛門に追い詰められ、降参し入門を希望する。以降、入門を認められた伊良子は、牛股・藤木とともに虎眼流の「一虎双龍」と呼ばれることになる。腕を上げた伊良子は道場随一の剣士となり、虎眼流の後継者と目されていた。しかし、虎眼の情婦であるいくとの密通を虎眼に気づかれ、呼び出された伊良子は、虎眼の「流れ星」によって両目を斬られ、いくと共に放逐される。
3年後。隆盛を極めていた虎眼流であったが、門弟が闇討ちされ、道場に首を晒されるという事件が発生する。高弟たちは犯人の捜索をするが、その中で高弟たちも同じ手口で殺害される。犯人は虎眼流への復讐を進める伊良子と判明するが、数日後に伊良子の策により分断された虎眼流の面々は刺客の襲撃を受ける。藤木と牛股は刺客を返り討ちにするが、虎眼は秘剣「無明逆流れ」を編み出した伊良子に斬られ、濃尾無双の伝説はここに幕を閉じた。
仇討を決意する藤木と牛股は逆流れを破るべく研鑽を続け、三重と共に師の無念を晴らそうとする。家老・孕石備前守の協力を得て、伊良子と藤木の果し合いの場が設けられるが、藤木は秘剣「無明逆流れ」に敗れて片腕を切り落とされ、牛股もまた伊良子に斬られる。意に沿わず生き延びた藤木だが、徳川忠長の命により自死も許されず、御前試合での再戦となった。
御前試合の場で、藤木は振り上げた刀を試合を見守るいくの眼前へ投げることで、「無明逆流れ」に空を斬らせるとともに、脇差を抜いて伊良子の懐に飛び込み、その胴を両断した。死闘を演じながらも互いを理解し合った藤木と伊良子であったが、忠長は伊良子を狼藉者とし、藤木に首を斬らせ晒すことを命ずる。己の意に反して伊良子の斬首を実行した藤木が自陣に戻って目撃したのは、自死を選んだ三重の遺体であった。