ウィンダリア
南方の海の国「イサ」と北方の山の国「パロ」は平穏な関係を築いてきた。しかし、パロの王ランスロは美しいイサを欲しがり、イサの水没を試みる。この企てはサキの村の青年イズーによって阻止されたが、イサとパロはこの事件をきっかけに互いに不信を募らせていく。やがて二つの大国の対立は間に挟まれたサキの村も巻き込み、戦争に突入する。戦いが膠着する中、パロはイズーに目をつけた。イズーの妻マーリンはイズーの妄想癖の性格をしばしばたしなめていたが、パロで英雄になるというイズーの功名心を引き留めることが出来ず、結果としてパロの思惑にイズーは応えた。マーリンは仕方なく「待っているから必ず帰って来て欲しい」と懇願し、守り刀を持たせてイズーの旅立ちを見送る。
しかし、イズーはパロに辿り着いたが、相手にもしてもらえず浮浪者同然の生活をすることになる。功名を焦ったイズーはかつて自分がイサの水没の危機から守るために閉めた水門に手を掛け、パロを戦勝に導いたイズーは多額の褒章を得て酒池肉林を繰り広げた。しかし、3か月後にはパロから目障りだとして命を狙われる。命からがらパロを逃げ出したイズー。彼が最初に見たのは不気味な月夜の明かりに照らされ、海水に没したイサの街だった。ようやくイズーは自分の愚かさを悟り、呆然と佇むしかなかった。その時、教会の鐘の音が鳴った。それを合図に亡くなった大勢のイサの人々の魂が赤い鳥の群れとなって集まってきた。イズーを責めるように傍らを舞い、幽霊船へ飛び立っていった。恐怖におののいたイズーは、慌ててサキの村へ走り出した。マーリンも同じように死んでいるのではないかという不安を抱きながら。
しかし、その不吉な予感は外れた。家の前まで辿り着いた時、窓から明かりがもれた。ドアが開き、マーリンが現れる。再会に喜び、抱擁する二人。しかし、しばらくして幽霊船の汽笛が鳴る。その音を聞いた時、マーリンは別れを告げ、赤い鳥となって幽霊船へ飛び立っていった。イズーの手に残ったのは、守り刀だけだった。