赤坂亮太氏(第1回ゲスト)
プロフィール
ロボット法研究者
産業総合研究所
1983年生まれ、東京都出身。
学生時代の多くの期間において情報技術と法・制度に関する研究を行っていたが、2012年にテレイグジスタンスロボット「TELESAR V」に出会う。ロボットが社会進出した時の責任問題を中心に研究活動を行いながら、ロボット法学会設立準備会を組織し、幅広い観点からロボットと法が関わる場面に関する研究に携わっている。
講演:TEDxTokyoyz
https://youtu.be/UitZDaOUgtw
翻訳書:『ロボット法』
http://www.keisoshobo.co.jp//images/book/324580_mid.jpg
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2018/1/29 講演内容
リーガルデザインとしてのロボット法研究
自己紹介
産業技術総合研究所
ロボット法(不法行為・製造物責任のアプローチ)
慶応SFC(情報政策)→東大情報学環(情報法)→会社員(情報セキュリティ)→慶応KMD(ロボット法)→慶応SFC(AI・ロボット法)→産総研
AI・ロボットと法の研究
AI・ロボットにより生じる法的問題について考える
多くの場合、いまだ起こっていない仮説事例について考える
本当はそのような問題はない、特定の学問領域たりえないという批判もある
いわゆる、サイバー法に対する「馬の法」批判がありえる
馬の法というジャンルはない。いろんな法の応用で、馬に対する規制などがあり得る、という議論
ロボット技術に特徴的な問題(calo,2014)
具現性(embodiment) :具体的な物であることに伴う問題
創発性(emergence) :自律的に動作することに伴う問題
社会性(social valence):人間との相互作用・交流があることに伴う問題
Balkin(2015)の修正
プログラミングによる物理的損害
責任分界点の不明瞭化
代替性
創発性と法的責任について考えてみる
Paggaro(2013/2018)の整理
ロボットをどういうものと捉えるか
単なる損害源 :ミニマムの考え方
適格な行為者 :人として扱うほどの権利性はないが、行為を起こしてしまう。
法的人格 :
例:子供の人格権は制限されているが、一定の法的責任はある。
ロボットに人格権を与えるか否か
ロボットやその関係者がどのような法的責任に直面するか
故意・過失責任
無過失責任
免責条項
創発性と法的責任について考えてみる
製造業者が責任を取るべきでしょう
ロボット・AI自体に責任主体性を観念できるか
ロボット法人説(Asaro,2007)
ロボット代理人説(Chopra, White, 2004など)
ロボットを購入した人に責任を負わせる
動物のアナロジー
Moral Crumple Zone
人間と機械の共同責任(M.C. Elish)
アナロジーの例
過失責任アプローチ
他人の世話に関する責任
「他人を害せざること」アプローチ
厳格責任アプローチ
人間の工業手段としてのロボット
ロボットに特有財産を認めるアイデア
ロボットに特有財産(Peculium:古代ローマにおいて奴隷に認められていた財産)を認めることで、契約外の義務を満たす保証となる
法的責任について考える
疑問点
本当に(自然人であれ、ロボットであれ)誰かの責任を問うというアプローチが有効か?
故意や過失は立証できるのか
厳格責任制度であっても、無過失責任が当然発生する制度にはなっていない
親と子のような1:1の関係でありえるのか?(AIネットワーク社会) : AIが自分でネットワーク上で学習してくることと、子供が自分で外で自分で行為することは類似しているのかどうか
本日のニュース:自動運転車についてはとりあえず補償を先にしてもらおう(自賠責保険)、不法行為から責任追及を後回しにして、補償を先に回そうという制度検討がされている
無過失補償制度
ニュージーランド事故補償法
不法行為訴権を廃止
ACCによる補償による損失補償+リハビリテーション
基となっているレポート:通称|ウッドハウスレポート
第1原則として、コミュニティの責任(Community Responsibility)が記載
コミュニティは働きたくても身体的な損害で動けない人に対する責任を負うべき
社会が複雑になるにいたって、事故の原因も複雑化している
ランダムで、統計的に事故にあたってしまう人がいるというコミュニティ固有のコストは、コミュニティ固有のコストとして、コミュニティの公平性に基づいて負担すべき。
総合救済システム(案)
産科医療補償制度(場面を限定すれば無過失補償制度も現実にありうるという例)
問題点
不法行為の役割をすべて果たすことができないのではないか
不法行為には損害補填機能に加え、予防機能、制裁機能もある
ニュージーランド事故補償法は、懲罰的損害賠償の訴権を廃止していない。総合救済システムの案は、危険行為課徴金や、故意の損害賠償訴権の維持などはしている。
責任が希薄化するのではないか
たかだか損害保険の掛け金を予め支払っておく程度の責任で良いのか
無責の補償は、個別的責任追及機能と救済が切り離されてすでに実現している
最終的には価値判断で決められるのではないか?
コミュニタリアンてどんな人?
まとめ:リーガルデザインという考え方
まだ起きていない問題について考える
今ある仕組みへのアナロジー・拡張でロボット・AIの責任について考えることは(一応)できる
ただし、すでに日本にある仕組みという「近い」概念の応用から、新たな法的主体やニュージーランドの法制度など今日の日本における法制度とは「遠い」位置にある概念も検討の対象となる
価値判断によるところもある?それをどう決める?
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