矢作尚久氏(第2回ゲスト)
1974年米国Palo Alto生まれ。1991年AFS交換プログラムでベルギーへ留学、2000年 慶應義塾大学医学部卒業(MD)、2004年 同大学院博士課程修了(Ph.D.)。2009年 東京大学医療経営人材育成講座修了(首席)。
2011年ハーバードビジネススクールMHDにScholarshipとして招聘され修了。その後、途上国への医療マネジメントシステムの提供準備を開始。2012年全国の医療情報を統合可能とする世界初のClinical DataManagement Networkを設計し、2016年稼動。国立成育医療研究センターにて、開発薬事・プロジェクト管理部 臨床研究ネットワーク推進室 室長補佐 情報戦略担当、データ科学室
室長代理を経て現職。内閣官房次世代医療ICT基盤協議会等構成員。パーソナルデータセキュリティ保証機構理事。慶應義塾大学SFC研究所 AOI・ラボの副代表。
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日本の医療システムは素晴らしい。この社会インフラを後世に残す
Social Design
デジュリスタンダード化戦略
デファクトスタンダード化戦略
人間を熟知する
人は同じように考える、というわけでは決してない。
人間を考え尽くす必要がある
医療とは?
ScienceとArtである
Tech DesignとLegal Designを横串の戦略で突き刺す必要がある
この2つの視点を行き来しないと行けないが、日本の医療の現場ではそれができる医者はあまり多くない
「患者に寄り添った医療システム」
Social Design
2001年1月高野氏(SFC1997卒)との会談
Technology Design
2001年2月加藤氏(SFC1999卒)との会談
初めての当直で、子供を持つ母親から問い合わせを受けた
これは大学病院が受ける問い合わせなのだろうか?と疑問を持つ。このようなことが進むと医療が崩壊すると思った。
実際に地方では崩壊している。
技術的には実現できるが、ハードルがある。
医療システムを考える
理想的な医療とは?
現状:安易なシステム化、無駄な政策、医療情報の氾濫(15年前から変わっていない)
このせいで、医療従事者の負担や患者の不安ばかり増えている
関係者マップ
厚生労働省から見ると、病院のピラミッド構造になっている。
医療従事者から見ると、患者を中心にいろいろな病院があると考えている。十分だと考えている。
患者から見ると、どこにいけばいいのかわからない。
患者さんの判断基準をアシストすればいいのではないか?
日本では小中高といった学校で、健康・医療について教育はできていない。
EX:チョーキングサイン
現在の医療
最初に判断するのは患者→医師A・救急隊→医師B・研修医→医師
確定判断を一貫して進めていくシステムを考える必要がある
今後の医療システム
暗黙知の可視化・技術化・システム化
対話型の高度な問診
診察項目予測表示
検査・処置予測表示
構造化された医療情報が蓄積される
インフラとしての医療
増え続ける医療費に対して、労働人口が減っている。財政破綻による医療社会インフラの崩壊の危機が迫っている。
平成27年の国民医療費は42兆円
労働人口は減っていく。
人口構成も逆ピラミッド
Tech Designは、医療の効率化を進めていく
Legal Designは、保険の再定義(次世代国民皆保険|20兆円規模)
国の動き
次世代医療ICT基盤協議会の設置
デジタル化や標準化を進めていくという目的
認定事業者をつくり、個人情報を匿名加工行えるようにする、という法律
保健医療分野におけるICT活用推進懇談会
PeOPLe(仮称)
戦略
データ流通と制御技術
患者不在の議論をすべきではないと、国の委員会で言い続けてきた。
患者ひとりひとりのためになるか、が曖昧だった。
患者は論文通りにいかない。
同意がある、ない⇔医療情報と生活・一般情報 の4象限をつくると
同意なし×生活・一般情報は、これまでのデータビジネス
同意あり×生活・一般情報は、情報銀行
同意あり×医療情報は、困難
そのため同意なし×医療情報で、医療情報を使えるように次世代医療基盤法をつくった
患者は自分の知らないところで自分のデータが売買されていることをどう思うだろうか?
自分のデータが誰かの役に立つなら寄付したい 98%
自分のデータを自分の意志で提供先に届けたい 92%
血液一滴はダイヤより貴重=データは命そのもの
臓器提供意思表示カードと何が違うのか?
どのような状況で、どの範囲の情報を、どこへ届けるか、という個人の意思に基づいて情報流通制御をする技術を開発している
同意あり×医療情報を、Technology DesignとLegal Designで解決できる
5000の医療機関に対して、データ流通の基盤技術の提供が始まっている。
医薬品物流と「創薬」
新薬の開発の成功確率は3万分の1
医薬品のサプライチェーンの再定義
卸流通→医療機関→患者
サプライチェーン間でどこまで情報共有ができているか?現状全くできていない。
情報共有をダイレクトにできたら、どうなるだろうか?
医薬品の種類
ジェネリック医薬品
低分子医薬品
中・高分子医薬品、バイオ・抗体薬:物流管理コストが高い。またリスクも高い。
これを情報流通・情報共有によって、コストとリスクを下げられる。
ワクチン管理システム
生年月日と患者の状態がわかっていれば、ワクチン接種記録を自身で管理できる
この情報(患者情報の把握)を医療機関やメーカーと共有できていれば、製造・流通を最適化することができる
メーカーは情報流通基盤導入することで、温度管理への投資をできるようになる
捨てられた新薬候補が再挑戦できる→制度設計の改善
これからの医療
情報流通制御技術におけるビッグデータ解析
マルチベンダー型電子カルテのデータを統合しそのデータを再構成し、利活用できる環境が動き始めている。これが患者自身に還元されていくサービスをつくっていかなければならない。