近代とは何か?
【近代 Modern とは何か?】
▶「近代」とは,私たちの「常識」が通用する時空間のことである。
ヨーロッパにおいて成立し、現在の私たちがもってしまっている常識=思想=考え方
主権国家体制の成立:ヴェストファーレン条約(1648年)以降の歴史
市民社会の成立:市民革命(17世紀)以降の歴史
資本主義の発達:産業革命(18〜19世紀)以降の歴史
国民国家の成立:ナポレオン戦争(1803〜15年)以降の歴史
歴史区分の「近代」を考えているだけでは不十分
歴史区分でいう近代は、近世よりも後、現代よりも前を指している。
▶「近代」の思想は、歴史的に作られた/構築されたものである
歴史的被拘束性がある:状況依存/歴史依存
絶対的・普遍的な価値ではない
2025/10/9 11:11 今日はここまで
【近代 Modern の中心となる3つの思想】
1. 方法的個人主義に基づき、社会契約論と経済学によって確立された「市民社会」の思想
ヨーロッパの市民社会を通じて作られた市民社会の思想は「自由で対等な諸個人からなる社会」という観念を創造する。
古い共同体の束縛から「個人」という主体が解放される(「個人」の発見)。
個人が自発的に社会形成に参加しようとする動機が作られ、主体の意志が活性化される。
方法的個人主義:個人の行為や内面を出発点として、社会はその総和であると考える。
方法的社会(集合)主義:社会を独自のものと見なす
方法的関係(相対)主義:社会を個人どうしの相互作用と見なす
社会的・経済的諸関係に規定された諸個人の不平等や不均等が発見され、それらが「個人の自己責任」へと転化=読み替えられる事態が生じる(イデオロギー)
2. 「世界史」という思想
「未開から文明へ」という進歩と発展という観念の創造
高速大量移動手段の一般化による地理的空間の縮小→〈地球〉の把握が可能となる
地球上の多様な民族、諸文化を進歩と発展という歴史の時間軸上に序列化する
序列化されることによって「世界」という空間ができあがる
「進んでいる/遅れている」という価値付けを生み出す
”先進国” ”後進国” という序列化
「進んだ文明」による「遅れた未開」諸地域の植民地支配を正統化する(イデオロギー)
”宗主国” による啓蒙活動
市民社会の思想を人類の歴史的進歩の到達点として位置づける
歴史の流れを「発展」と捉える→「世界空間」
他の諸社会に対するヨーロッパの優位性を確証する思想として「世界史」という思想が作られる。
ヨーロッパ以外の地域における「世界史」の受容と内面化が「文明開化」と見なされる。
ドイツ:ドイツ三月革命(1848年)
日本:明治時代(1868年)
ヨーロッパを頂点とする進化論的な感性による歴史が創造される
3. 「ナショナリズム」という思想
「国民」という枠組みにおいて想像された、自己中心的で排他的な帰属意識(アイデンティティ)
自分が帰属する共同体とその文化を至上のものと見なす考え方
「言語」と「血統(民族)」の共有という意識に基づいた、強力な情緒的連帯感の醸成
「われわれ(自国民)」と「他者(他国民)」との明確な峻別
他者(他国民)を敵として認知し、排除する戦争へと国民を動員する
【近代社会の特徴】
▶近代社会の特徴
https://gyazo.com/052fca5d2a62e48c7b52b63d441084e8
1. 「身分」から「個人」へ
身分:前近代の支配−従属関係による上下関係、相補的関係
個人:近代の所有を前提とした契約関係、対等関係、相互的関係
2. 「個人」による「自己責任原則」の成立
自由に考える主体としての個人
所有者としての個人
生活の自己責任
3. 「個人」の集まったものとしての「大衆(群衆)」の生成
バラバラの個人が、傾向的に均質化される
商品経済による生活の均質化
4. 国民国家(近代国家)の成立
課税徴収権の確立:税金を徴収し、国家の基礎を作る政策を実施する
資本制経済を下支えする労働力商品を作る:社会政策を実施する
国民国家を形づくるしくみを作る:議会/軍隊/学校/会社(工場)/家族
5. 近代家族の成立
共同体的紐帯の解体後、自己責任による生活維持を実現するために近代家族が作られる
6. 学校制度の成立
言語の統一
社会的ルールの統一
「正しいこと」(正義)を教える=「常識」の生成
知を通じた国民の形成(均質化)
7. 会社(工場)制度の成立
所有権の設定(私的所有の法認)
営業の自由
【近代を支える生産/再生産の連関:近代家族モデル】
▶私的領域の分離と近代家族の生成
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