Eth2ステーキングに資産をロックせず少額での参加をインフラ無しで可能にする非中央集権型プロトコル「Lido」
TL;DR
Lidoは以下の特徴を持つ非中央集権型のEth2ステーキングプロトコル。
1. デポジットが一方通行でない
2. 32 ETH単位でなくてもデポジットできる
3. バリデータクライアントを動かさなくて良い
執筆時点で125,458 ETHがステークされている(Eth2ステーキング全体の約4%)。
Lidoを用いたステーキングのメリット
1. デポジットが一方通行でない
Ethereum 2.0のBeacon Chainは、現行するEthereumメインチェーン(Eth1)とは異なるチェーンであり、将来的にそれら2つのチェーンの"マージ"が予定されている。マージが完了するまではBeacon Chainにステーク、すなわちEth1上のデポジットコントラクトに預けたETHはロックされ使用できなくなる。 Lidoでは、コントラクトに預けたETHと同数量のstETHトークンが発行され獲得できる。このstETHはマージ後にETHと同数量で交換できることで価値が保証されている。また、1日に1回、ステーキング報酬から手数料を引いた分だけ、stETH保有量は増減する(リベースされる)。stETHによりETH2のステーキングの恩恵を受けながら、DeFiの担保などEth1上で自由に利用できる。
cipepser.icon マージ後までは戻せない感じですよね?
minaminao.icon デポジットコントラクトにデポジットされたETHは当然戻せないのですが、ユーザーはCurveなどの分散型取引所でstETH->ETHに交換できるため、ユーザー視点では戻すことが可能です。
cipepser.icon nrhd
cipepser.icon stETHによる流動性プールや担保としてstETHが使えるDeFiも既に存在するんです?→これもCurveがあること後ろに書いてありました :bow:
cipepser.icon ETH2建て手数料を、ペグしたstETHで表し分配するという理解なんですが、「減る」こともある?→ああ、後ろに書いてありました :bow: スラッシングとかがあるんですね。
minaminao.icon そうですねー。減る要因として他にはinactive leak(オフラインによるペナルティ)もあります。 nrryuya.icon > 法律的にどうなのだろう
2. 32 ETH単位でなくてもデポジットできる
バリデータになるには"ちょうど"32 ETHをデポジットする必要がある。
Lidoでは、ユーザーから送らてきたETHをまとめてシンジケート的にステークするため、少額のステーキングや32の倍数でない数量のステーキングが可能になる。
3. バリデータクライアントを動かさなくて良い
Lidoでは、バリデータクライアントは代理のオペレータが実行する。その分、手数料は取られる。
Lidoのステーキングのフロー
https://gyazo.com/3729cc353db387199bcd56daae71af0e
ステーキングの流れに沿って説明する。(※ トランザクション粒度でない)
1. ユーザーがLidoステーキングコントラクトにETHを送る。
2. Lidoステーキングコントラクトがユーザーに同数量のstETHを発行し送る。
3. Lido DAOによって決められたオラクルが、Lidoステーキングコントラクトに溜まったETHをEth2デポジットコントラクトにデポジットする。この処理は1日1回行われる。
4. Eth1とEth2のマージ後、Lido DAOの閾値署名アカウントにETHが引き出される。
5. ユーザーが所持するstETHと同数量のETHを交換する。
Lidoの収益分配構造
https://gyazo.com/eecdacbb5a0d31e35d83b931250ec71f
Lidoの全Eth2バリデータの報酬/スラッシングは、Lido DAOによって定められたオラクルによりLidoステーキングコントラクトに1日1回報告される。この際に、stETHのリベースすなわち総供給量が変更され、バリデータの損益が正であればstETH保持者のstETH残高は増加する。バリデータの損益のうち、90%はstETH残高の増減に利用されるが、10%はLidoの手数料になる。この手数料は、2つの目的があり、1つはLidoのEth2バリデータを運用するノードオペレータへの収益、もう1つはLidoのトレジャリーである。トレジャリーは、一般的なプロトコル同様PRや監査などLido発展のための様々な用途に使われる他、大規模スラッシングが起きた際の保険としても利用される。
CurveのETH-stETHペアとLDOトークン
Curveはソフトペッグ系のトークンを扱う分散型取引所であり、ETH-stETHペアが上場している。これにより、stETH所持者は任意のタイミングでETHに戻すことが可能となる。ただし、stETHはステーキング報酬を得られる分、ETHよりわずかに価値が高い。執筆時点でのレートはstETH/ETH = 1.0002である。 また、ETH-stETHプールに流動性を提供すると、CurveのCRVトークンに加えて、LDOトークンが得られる。LDOトークンは、Lido DAOのガバナンストークンであり、Lidoのプロトコルパラメータ調整やノードオペレータの管理に用いられる。
Lidoのリスク
スマートコントラクトの脆弱性
Beacon Chainの技術的な失敗あるいは不採用
Lido DAOの閾値署名鍵の多くが紛失あるいは流出
大規模なスラッシング
悪意あるノードオペレータによる不正行為
など。