中森康之
ごあいさつ
みなさん、中森康之です。
2020年度の総合教育院長です。
といっても別にエライわけではありません。
私がどういう人間かは、まずは下記をご覧下さい。
メッセージ(新入生へのメッセージですが、新入生でない方もご覧下さい)
さらに、
実は私のPVがYouTubeにあがっているんです。
なんと8年ちょっとで、1,100回以上も再生されています!!
恥ずかしいのでこれまでは内緒にしていたのですが、こういう状況ですので、
ええい、思い切って公表しちゃいます。
2011年に「ヒューマンネットワーク高専」の総会で講演したときのものです。
kayaの平井さんが作成して下さったものです。
https://youtu.be/7rbYONTmy_A
授業について
授業については、それぞれのページをご覧下さい。
国文学1(中森康之)2020 国文学特論2 日本文化論 日本文化特論
興味のあること
私はいろいろなことをやっているので、よく「お前の専門は何だ?」って聞かれます。
興味もないのに適当に聞いてくる人には、「日本文学です」とか「近世俳諧です」とか適当に答えています。
でも誠実に聞いてくれる人には誠実に答えないといけません。
最近ようやくわかってきました。
私は、ごく普通の人間 に興味があります。
「ごく普通の人間が日常生活を生きることを支える力は何か?」
おそらくこれが私の研究テーマです。
「自分には個性がないし」とか、「自分には特別な才能もないし」とか「自分には魅力がないし」などと思っている人が、それでも日常生活をいきいきと生きることができるっていいでしょ。それを可能にする力とは何かを考えています。
私の研究は既成の学問分野でいうと下記になります。
書いてみて、確かに「あなたの専門は何?」と聞きたくなりますよね、と再認識致しました。
かなり長いですが、さら〜とでも読んでみてくれると嬉しく思います。
日本文学(江戸時代の俳諧)
芭蕉とその弟子の支考(しこう)、江戸中期の蝶夢(ちょうむ)という俳人の俳論の研究をしています。芭蕉は旅をしていましたけど、芭蕉が切り開いた俳諧って、普通の人が日常生活を送りながら、日常生活をよりよく生きるためのプチアイテムだって支考が見抜いたんです。だから芭蕉や支考や蝶夢の研究は、文学が日常を生きる人を支え、より豊かで楽しい人生を送るためのアイテム研究ということになります。
現象学
現象学を研究しているのではなく、現象学を使って、ここに書いてあるようなことをいろいろ研究しています。私にとって現象学は、いろいろなことを一からきちんと考えていくための最強ツールです。
建築思想・建築文化
私は魅力的な建築物に触れたとき、「これを設計した人ってどんな人だろう?」って考えます。「どういう文化の中で、どういう考え方をし、どういう生き方をしてきたのだろう」って。今最も注目しているのは、 W・M・ヴォーリスという人です。
ヴォーリスって、建築の教科書にはでてこないんです。だから高専で建築を学んできた学生さんに聞いても、ほとんど知りません。ところがその一方で、数年前から巷ではヴォーリスブームなんです。そこに集まってくるのは、建築の専門家ではない「素人」ファンがとても多いんです。休日の見学ツアーはいつも満員。彼(女)らは、口を揃えて、 「自分の居場所がある」とか「何となく懐かしい」とか「どこかいい感じ」とかって言います。つまりヴォーリス建築の内部空間に入ったときの実感を語っているんですね。「ヴォーリス建築は気持ちいい」って。
でもヴォーリスは、建築史上画期的なデザインをしたとか、新しいスタイルを発明したとか、そういうのはないんです。だから建築史の教科書には載らない。素人がいいと感じるものと専門家の評価がズレているということですね。
でも例えば住宅って、ごく普通の人が普通に日常生活を送るところでしょ。それが気持ちいい空間って、いいですよね。
それ以外に、アルヴァ・アアルトという人についても興味を持っています。アアルトは建築の世界でも超有名な建築家ですけど。
コミュニケーション力
ごく普通の人が日常生活を豊かに過ごすためには、他者とのコミュニケーションが必要です。ここでいうコミュニケーション力って、ディベートが得意とか、プレゼンテーションが得意とか、議論に負けたことがないとか、そんなものではありません。
「自分にはコミュニケーション力がない」って思い込んでいる人って結構多いんです。でもそれはただの誤解であることが多い。
私が考えるコミュニケーション力は、「自分が相手に何か伝えたいことがある、相手が何か伝えたがっている」、そういうときに使える力です。別にしゃべりたくないときはしゃべらなくていい。でも何か話したいときに自由に話せる力はちょっともっておいた方がいい。そう考えています。
「人間力」
「人間力」というと定義が曖昧だとかよく言われますが、私はそれほど難しく考えていません。私が考えている「人間力」とは、「他者との関係の中で、自分を生かす能力の総体」のことです。あるいは「他者との関係の中で、自分の能力を発揮する力」のことです。みなさんは技術者を目指して勉強中です。卒業、終了の頃には高度な技術力を身に付けていることは間違いありません。でもそれがうまく使えなかったらもったいないでしょ。だから、いつでもどういう状況でも、それを十分に発揮することが出来る能力も合わせて身に付けておかないといけないわけです。平時ならできたけど、緊急事態だから焦ってできなかった、というような技術力では役に立ちません。
思想としての武道 日本文化の思想
上に書いて生きたような、普通の人が日常生活を送るための知恵、緊急事態のときに自分のもっている能力を十分に発揮できる力を養うには武道が最適です。実は私、剛柔流空手道八段範士、古武道免許皆伝なんです。大学では武道部の顧問をしています。空手といっても、みなさんがイメージするものとはちょと違うかも知れません。でもそれはここではおいておきます。
内田樹さんは、武道とは「人間の生きる知恵と力を高めること」で、「どうしていいかわからないときに、どうしていいかわかるような心身の技法」だとおっしゃっています。私もそう思います。
日本文化論(中森康之)という授業では、日本文化にみられる価値観や思考法を紹介しています。日頃皆さんが慣れ親しんでいる工学的思考とはまた違った思考法です。日頃、自分が持っている価値観や発想法に縛られて、不自由感を感じたり、その通りできないことに落ち込んだりしている人は、ぜひ日本文化論の授業をのぞいてみて下さい。武道や将棋、宮大工の世界に見られる思考法は、そのようなみなさんを解放して自由にしてくれるものなんです。
リベラルアーツ(教養教育)
最近、リベラルアーツ(教養教育)の力とその必要性を総合教育院の他の先生たちと考えています。とくに技術者教育において、このリベラルアーツ(教養教育)はとても大切で、本学では開学以来ずっと大切にしてきたものです。
最近、このリベラルアーツ(教養教育)はテクノロジーの世界でも重要性が主張されています。例えばマイクロソフトのブラッドスミスさん(プレジデント兼最高法務責任者)とハリーシャムさん(Artificial lntelligence and Research担当エグゼクテイブバイスプレジデント)は、『the-Future-Computed人工知能とその社会における役割』(https://news.microsoft.com/uploads/prod/sites/47/2018/05/The-Future-Computed.pdf )の序文において、次のように述べておられます。
「これらの議論により、おそらく最も重要な結論の一つが得られます。ステイーブ・ジョブズ が繰り返し言っていたことを思い出す必要があります。ステイーブは、常にエンジニアリンクとリベラルアーツの交差点で働くことを目指していました」。
私たちもiPadの発表会で、スティーブ・ジョブズさんが「アップル社がiPadのような製品を創り出すことができたのは、我々が常にテクノロジーとリベラルアーツの交差するところにこだわってきたからだ」と述べたのを聞いたことがあります。またその後、iPad2の発表会でも「テクノロジーだけでは十分ではないのがAppleのDNAだ。リベラルアーツと結ばれ、人文科学と結ばれたテクノロジーが、我々の胸を 高鳴らせるような結果をもたらすのだ」と語っています。
それに加えて私の関心で言えば、やはり「リベラルアーツ(教養)とは普通の人がよりよく生きるための知恵」なのだということです。そこには他者とのコミュニケーションも含まれます。他人の気持ちがわかる想像力もそうです。私たちは今目の前にないものに対する想像力を持っています。目の前にいない人が何をやっているか、目の前にいない人がどう考えているかという想像力、過去や未来に対する想像力、そういうものがないと人生はとても痩せたものになってしまいます。
最近はもうひとことで、「リベラルアーツ(教養)とは想像力だ」と言い切ってもいいのではないかくらいに考えています。
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最後まで読んで頂きありがとうございました。
その他、下記にもいろいろ書いてますのでよかったら見て下さいね。
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