文法:接辞関係:直接・間接目的語のアラインメント
日本語の「~を…に」や、英語の第4文型 (SVOO) のように、目的語が2つになるような文が存在する。
このような表現のしかたには、〈対象〉〈相手〉のうちどちらを普通の目的語(目的語が1つのときの目的語)と同じ表示方法とするかによって、大きく2通りの仕組みがある。
例えば日本語は、目的語1つの場合に用いるヲ格を、目的語が2つの場合の〈対象〉にも使っている。このとき、直接目的語はヲ格、間接目的語はニ格をとっている。このようなアラインメントを間接型という。逆に、目的語が1つの場合の目的語と、目的語が2つの場合の〈相手〉を同じ形で表示するものは、二次型と呼ばれる(〈相手〉を一次目的語、〈対象〉を二次目的語という)。
オエル語では、間接型と二次型のいずれの形もとれるようになっており、それぞれにニュアンスの差異がある。
なお、以下における "絶対格項" には、非受動性能格をとる場合も含まれうる(参照:文法:アラインメント)。 また、同様の文法を用いた表現として「壁塗り交替」が可能である:「ペンキを壁に塗る / ペンキで壁を塗る」「電気をLEDに通す / 電気でLEDをつける (オエル語文では「通す」「つける」相当の部分がともに ƣahū)」。
与える系の表現
「~を…に」のように、直接目的語と間接目的語をともにとる場合の表現には、大きく分けて2通りある。
絶対格-与格 パターン
〈対象〉を絶対格 -bix に、〈相手〉を斜格 -e' にとるパターン。間接型である。
その動作自体が相手への方向性を持っている場合に使われる(「送る」「話しかける」など)。
相手がその対象を得るところのニュアンスは強くはない。英語でいう V something to somebody にあたる。
絶対格-位格 パターン
〈対象〉を絶対格 -(b)ix に、〈相手〉を位格 -isш にとるパターン。間接型である。
その動作自体が相手への方向性を持っていない場合に使われる(「買う」「考え出す」など)。
相手がその対象を得るところのニュアンスは強くはない。英語でいう V something for somebody にあたる。
生格-絶対格 パターン
〈対象〉を生格 -ati に、〈相手〉を絶対格 -bix にとるパターン。二次型である。
相手が実際にその対象を得るところまで含意する。英語でいう V somebody something にあたる。
授与格-絶対格 パターン
〈対象〉を授与格(= 殺格-再帰-生格) -atiggwati に、〈相手〉を絶対格 -bix にとるパターン。二次型である。
その対象を自らが与えるところ(特にこの部分)から、相手が得るところまでのニュアンスを強く持つ。
奪う系の表現
また、これらと対義にあたる「~を…から」のような対義の表現も、同様に以下の2通りがある。
絶対格-奪格 パターン
〈対象〉を絶対格 -bix に、〈相手〉を奪格 -end にとるパターン。間接型である。
相手がその対象を失うところのニュアンスは強くはない。
殺格-絶対格 パターン
〈対象〉を殺格 -atig に、〈相手〉を絶対格 -bix にとるパターン。二次型である。
相手が実際にその対象を失うところから含意する。
受領格-絶対格 パターン
〈対象〉を受領格(= 生格-再帰-殺格) -atyugwatig に、〈相手〉を絶対格 -bix にとるパターン。二次型である。
その対象を相手が手放すところ(特にこの部分)から、自らが得るところまでのニュアンスを強く持つ。