文法:アラインメントにおける3つの「格」と格枠付け
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オエル語のアラインメントは、動詞側から〈何の項をとるか〉、名詞側から〈何の格になるか〉と、2方向から決定づけられており、これがオエル語アラインメントの複雑さの所以となっているといえる。
ここでは、オエル語における3段階の「格」についてまとめる。
1. 動詞側の「格」:項としての格
動詞側から決められた、項としての「格」。
すなわち「この動詞は○格項をとる」というときの格である。
2. 名詞側の「格」:語句における格
名詞側で決まった「格」。
例えば、絶対格項であるが、その動作に影響を受けていないことから名詞は能格をとっている(非受動性能格)場合に、「絶対格項の名詞が能格語となっている」というときの格である。
3. 形式上の「格」:形としての格/形式格
実際に文字上に現れる「格」。
例えば、"名詞側の「格」" で能格であっても、目的語との区別や主語としての強調などのために因格接辞をつける場合がある。この場合に、「能格語(句)が因格形をとっている」というときの格である。
これらの概念が有用となるのは、主に絶対格・能格、また一部の場合における具格・因格について述べる場合である。能格項・絶対格項以外では、これら3段階の「格」で違いが生じることはない(と現時点では思われる)。
関連用語の定義
活格的能格型アラインメント:非受動性能格(後述)の存在によって生まれる、活格型アラインメントに近い性質を持った能格型アラインメント。
非受動性能格:絶対格項における能格語(句)。その動作に影響を受けていないことから絶対格接辞がつかないというものである。
明示的当然の非受動性能格:非受動性能格のうち、絶対格接辞によって示される「影響」をあえて強調しない場合に用いられるもの。
コピュラ呼応主語:動詞(のうちコピュラの部分)が人称・数と呼応する際に主語として扱われる語(句)。その項が「コピュラ呼応主語項」である。
能格語能格語(句)強調の因格形:能格項の能格語(句)を強調するために因格形を用いることがある。この因格形がこれである。
能格項能格語(句)明示の因格形:能格項と絶対格項がともに能格語(句)となる場合のうち、それらの語(句)の人称と数が一致しているとき、主語が判別できなくなってしまうことがある。このとき、能格項の能格語(句)を絶対格項のそれと区別するために、因格形とすることで明示する。この因格形がこれである。
使役文能格項能格語句明示の具格形:「能格項能格語句明示の因格形」に似るが、使役文では因格項が既に存在しているため、能格項の能格語(句)を因格形で明示することができない。そこで、一般に因果関係の段階が〈因→能→具→得られた結果〉であることから、このときの能格項の能格語(句)は、具格形とすることで明示する。この具格形がこれである。
格枠付け
オエル語は「動詞枠付け言語」「衛星枠付け言語」と対比して「格枠付け言語」であるといわれる。衛星枠付け言語の下位分類ではあるかもしれないが、オエル語の「格枠付け」の方式が、次のように複数種類あるという特異さから、敢えて衛星枠付けとは切り分けて称している。
なお、「動詞枠付け言語」「衛生枠付け言語」は移動動詞に関する概念であり、オエル語の「格枠付け」はそれに擬えているものの、もっと広範な概念であることに注意されたい。
"項としての格"枠付け
項としての格による枠付け。
例)gaƣx「刺す」から gaƣx <通格項>「<通格項>を貫通する」、gaƣx <内格項>「<内格項>に入り込む、乱入する」が派生する。
"語句における格"枠付け
語句における格による枠付け。
例)gesalōn「考える、分析する」は絶対格項をとる動詞であるが、絶対格項の語が能格語であれば「<絶対格項>を分析する」、絶対格語なら「<絶対格項>だと分析する」となる。