コードの変更に金がかかると失敗したくなくなる
AIエージェントによるコーディングはたいていトークン数やリクエスト数による従量課金が存在し、ざっくり考えれば、AIにさせた作業量に応じて金がかかる構造にある。
実際に自分でやってみても思うが、コードの変更に金銭的コストがかかるようになると、変更することを失敗しにくいことに絞るようになる。お金をかけた作業が無意味なものとなるのはシンプルに損失だ。コストがかかっているからにはそれに見合うリターンが欲しくなる。であれば、うまくいく可能性の高いことをやらせたい。
この構造は試行錯誤と相性が悪い。要件を満たすだけのコードからよりよいコードに近づけるためには、あーでもないこーでもないと様々なアプローチを試すことが不可欠だ。人間がやるならその過程においても経験が得られるが、AIがやるなら最終的なアウトプットに至るまでの過程は単なるコストだ。コストは小さくしたほうがいい。そうなると試行錯誤の幅を狭めるインセンティブが働いてしまう。つまり、失敗しにくいことを選ぶように傾いていく。
学びを深めるための身体的な経験を得るためには、試行錯誤のコストが無視できるほど小さいことが重要そうに思える。AIのコストが気になってのびのびとコードを変更できなくなるというのは、絵の練習をするのに画材のコストが気になって思うように描けなくなるようなものだ。
手でコードを書くのはいい。なんと無料だ。時間さえあればいくらでも書き直していい。しかも得た経験はエージェントとのチャットセッションのように揮発しない。なんと学びに向いていることか。