対話のテーブルとインターネット
インターネットで公開される言論のすべてが対話のテーブルに載っているわけではない
対話とは(細川英雄『対話をデザインする』)
「常に他者としての相手を想定した」会話
「話題に関する他者の存在の有無」
「一つの話題をめぐって異なる立場の他者に納得してもらうために語る行為」
対話のテーブルに載っている言論とは、
その言論が反論に対して開かれている(対等性)
その言論を成立させる論理が明解である(論理性)
言論が反論に対して開かれているとは、
発言者と他者が双方向に意見を述べられる(コミュニケーションの双方向性)
その言論が複数人の間で共通する間主観的な確信についての話題である(話題の普遍性)
言論を成立させる論理が明解であるとは、
その言論において使用されている言葉が正しく定義されている(コミュニケーション成立の信憑性)
名称の定義から出発し、最終的な結論に至るまでの推論の過程が示されている(推論の再現可能性)
対話のテーブルに載っていない言論に反論しても対話になりえない
反論に対して開かれていない言論
発言者と他者が双方向に意見を述べられない場合
アクセスできない言論には反論できない
誰かの伝聞や噂といった信憑性の低い二次情報に対して反論しても発言者との対話は成立しない
外野からの一方的な物言いは対話とはいえない
その言論が複数人の間で共通する間主観的な確信についての話題ではない場合
間主観的確信 <--> 個的確信
個的確信についての言論は発言者以外において成立しない
経験や感覚、信念、意志など
話題に関する他者が存在しなければ、対話は成立しない
成立させる論理が明解でない言論
その言論において使用されている言葉が正しく定義されていない場合
前提となる言葉の意味の未定義
意味に解釈の余地が大きい言葉の使用
同じ言葉を使っても同じ意味が伝わっていると確信できないならば、対話は成立しない
名称の定義から出発し、最終的な結論に至るまでの推論の過程が示されていない場合
論理の飛躍があり、他者が推論を再現できない
推論の途中に不確かな前提が挿入されている
他人が確かめることのできない個的確信(思い込み、信念)を含む推論は、同じ前提から異なる結論を導く他者との間で論理同士を対立させることができず、対話は成立しない
他者からは不可知の前提を操作して後出しジャンケンが可能になる
言論をインターネットで公開することは対話のテーブルに載せることか
インターネットで誰でもアクセスできる場所に公開するだけでは、対話のテーブルに載っているとはいえない
コミュニケーションに双方向性があるか
コメントやレビューを受け付けているか
話題に普遍性があるか
発言者以外の他者にも適用するような話題であるか
コミュニケーション成立の信憑性があるか
抽象的で意味の定まらない言葉で論理を展開していないか
推論に再現可能性があるか
個人的な信念や思い込み、道徳観が論理の中に含まれていないか
発言者が対話のテーブルに載せようとして載っていないこともあれば、載せたくないと思って載せていないこともある
なぜ対話のテーブルに載せたくないと思っているのに他者から反論を受けることがあるか
その話題が個的確信にとどめられていない場合、他者を巻き込んでしまう
個的確信であることを明確に示さずに、普遍的に成立する確信であるかのように発言してしまうことで、意図していない他者が反論できるようになる
話題にかかわらず他者の個的確信に対して侵害することをいとわない攻撃的な人間が存在する
自らの個的確信と照らして好ましくない他者の個的確信を否定する態度
個的確信の否定とは人格の否定である
「反論されたくないなら公開するな」という主張は攻撃者の論理である
法やルール(普遍的確信の最たるもの)に反していないのならば、それが個的なものであると示されている限りで「反論されたくないと思う自由」を求めることは理にかなっている
その代わり、その言論は他者を巻き込むことを放棄しなければならない
逆に、他者を巻き込もうとするならば、言論を対話のテーブルに載せなければならない
反論を許さずに他者を巻き込もうとするのは独善主義であり、信念の押しつけである
反論しようとしてもできない論理で他者を巻き込もうとするのは、詭弁であり詐欺である
対話のテーブルに載っていないと感じた言論に対して反論を試みるのは多くの場合衝突や望ましくない応酬へ発展するため、賢いおこないとはいえないだろう