Ubiquitous Power Law Scaling in Nonlinear Self-Excited Hawkes Processes
担当:藤原俊太
社会科学や自然科学における多くのデータは、特徴的な変数の大きさや頻度に関して冪則の密度分布を示す。このメカニズムについて、多くの提案が為されてきたが、本論文では非線形ホークス過程の視点から確率密度関数の冪の漸近形を導出した。ホークス過程とは、過去のイベントが未来のイベントの発生に影響を与える自己励起点過程の一種であり、特に非線形のホークス過程は一部を除いてまだ詳しく調べられていない。そこで、後述する3つの条件を満たす非線形ホークス過程に対して、マルコフ埋め込みを適用することでマスター方程式を導出し、それを解くことで冪の漸近形を導いた。
intensityとtensionが以下のように非線形関数gで結びついているとする。
$ \lambda(t) = g[\nu(t)]
ここで、tensionはmemory kernel h(t) で
$ \nu(t)=\sum_{i=1}^{N(t)}y_ih(t-t_i)
いま、非線形関数gは、以下の3つの条件を満たすものとする。
(i)gは早く加速する:
$ g(\nu)は\nu^2よりlarge \,\,\nuで早く発散する
(ii)mark分布ρはtwo sidedで非正の平均を持つ:
$ \int_{-\infty}^0 \rho(y)dy\neq0,\,\int_0^{\infty}\rho(y)dy\neq0,\,m=\int_{-\infty}^{\infty}y\rho(y)dy\leq0
(iii)mark分布ρはfast-decaying tailsを持つ:
$ \Phi(x)=\int_{-\infty}^{\infty}dy\rho(y)(e^{xy}-1)が存在する
このもとで、マルコフ埋め込みを適用してマスター方程式を導出し、それを解くと、定常確率密度関数が次のような冪の漸近形を持つことが分かった。
$ P_{SS}(\lambda)\propto\lambda^{-1}\Bigg[e^{-a\nu}\Bigg\{\frac{dg}{d\nu}\Bigg\}^{-1}\Bigg]_{\nu=g^{-1}(\nu)}
特に、markの平均mが消失する極限において、Zipf's lawが現れる。
このように、本論文ではZipf's lawを含む冪則のメカニズムを明らかにし、その不偏性の理解に役に立つ。また、非線形ホークス過程はホークス過程の拡張になっており、その解析的な手法を提示した。本論文の手法と結果は、データ解析や現実の複雑系の解析において有用である。