Dissecting cross-impact on stock markets: An empirical analysis
M Benzaquen, I Mastromatteo, Z Eisler, JP Bouchaud
Journal of Statistical Mechanics: Theory and Experiment, 2017
ヘッジファンドを代表とする機関投資家やブローカーの重要な業務の一つに注文執行業務がある。注文執行業務とは、ポートフォリオの再編成や売却を行う際に、金融市場で効率的に取得(売却)する業務のことを指す。彼らは大量の金融資産の売買を行うため、それらを原因とする価格変動(プライスインパクト)を無視することが出来ない。そのため、効率化するための執行方針を実現するために適切にプライスインパクトをモデル化することは重要である。
ここで、先行研究のプライスインパクトのモデルについて簡単にレビューしよう。時刻𝑡に観測された注文の売買符号を𝜖(𝑡), 時刻𝑡の価格を𝑚(𝑡)と定義したとき、時刻𝑡に観測された売買符号が𝜏期先の価格に対して及ぼす影響として定義される:
𝑅(𝜏)≔⟨(𝑚(𝑡+𝜏)−𝑚(𝑡))𝜖(𝑡)⟩
このように市場の分析や戦略のモデル化に使われてきた単市場における価格インパクトモデルだが、「価格インパクトの伝搬が同一市場で閉じている」という仮定は現実を即しているといえるのだろうか?例えば、ETFや投資信託などの価格付けについて考えよう。それらの構成銘柄の一つが価格変動が発生したとき、定義よりETFに対してもその価格変動が伝搬する。つまり、伝統的な価格インパクトのモデルの仮定である「ある資産で発注された注文は異なる資産の価格形成に影響を与えない」に反する自明な例を見つけることができる。そのため、この仮定を弱める(一般化する)ことは
1. 資産価格のモデル化を高精度化する
2. 流動性コストを考慮したポートフォリオ最適化問題
を考えるうえで重要である。
そこで、本研究ではそのような問題を解決する第一歩として、他の資産の注文流が別の資産に影響を与えるかどうかということをデータ分析のアプローチで定量的に評価した結果について報告する。最終的に、他の市場の注文流が別の資産の価格形成に影響を与えることを示す。
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