ラボ/指導教員の業績・研究費を調べるにはどうすればよいか?
学生にとってはラボ選びとって非常に重要である.正直,研究者を目指す学生にとっては,ラボ選択は大学入試よりも重要な選択だと金澤は思っている.そこで,各大学教員の「身辺調査方法」のイロハを教える.
実は大学教員の業績調査を学生側である程度行うことが出来る.具体的には次のサイトを見ればよい:
研究室/教員の個人ウェブサイトの出版履歴
Google Scholarでの出版履歴と引用数
Researchmapでの出版履歴と外部資金取得歴
KAKENでの科研費取得歴
である.実は教員側はこれらのサイトを駆使して,他の教員の業績調査をよく行っている(特に人事採用の際).
1) 研究室/教員の個人ウェブサイト
まず最もメッセージ性が高いのは研究室/教員の個人ウェブサイトである.まずここで出版歴を確認すべきである.
年何本くらい論文を出版しているか?
どういう雑誌に出版しているか?トップ誌からどの程度の頻度で出版しているか?
学生が主著の論文はどの程度あり,所属学生はちゃんと主著論文を定期的に出版出来ているか?
などである.ここは恐らく多くの学生が見ていると思う.
2) Google Scholar
次にGoogle Scholar(GS)である.GSは論文検索に用いられるウェブサイトだが,研究者の論文リストをプロフィールとして載せることが出来る.多くの研究者はこの機能を利用している.GSのプロフィールでは,過去の出版論文とそれらの各論文の引用数が非常に簡潔にまとまっている.引用数は研究者の評価と強くかかわっているため,これらの客観指標は大きな意味を持つ(人事担当者は凄くGSを見ているとよく聞く;ちなみに金澤は2022/11/04時点では採用側には回ったことはない). ただし,GSについては深刻な注意点もある.それは「引用数の相場」を理解することが容易ではないということだ.引用数は分野依存性が非常に高い.例えば生物医療系・素粒子系では引用数は非常に高く出やすいし,強相関物性系も引用数が結構高く出る.統計物理系は比較的引用数が少なく出やすく,統計物理周辺の学際系(経済物理含む)の引用数も分野次第で大きな差がある(ネットワーク科学は引用数がそこそこ高く,金融系の経済物理は引用数が低く出る).また,数学/経済学/統計学の分野では物理一般よりかなり引用数が少なく出やすい.分野間で50倍以上は相場の差がありえると言って良いだろう.
その意味では単純に引用数だけを比べて研究者の「ランキング」を作ることには意味がない.「物理」という括りですら,異分野間(いや,もっと狭くして「近隣分野の異なるテーマ間」であっても)での比較は難しい.また,年齢とともに引用数は当然増えて行くので,年齢を大きく加味する必要があるだろう.つまり単純に比較する場合は,同分野(もっと言うと同じテーマ?)の同年代の研究者に限った方がいいだろう.
そして,物理で言う「オーダー評価」に使用するのが良い.同分野内でもテーマが異なると数倍程度は引用の相場が変わり得るので,オーダー評価程度の雑な見積もりを行った方が良いと思う.細かな数字を比較するのでなく,「(どういう要因でも説明できない,つまり「オーダー」として全然違うなど)明らかな業績上の差があるかどうか?」を理解するのに使う.極端な話、ほとんど最近論文を書いていない人/引用が本当にほとんど伸びていない教員については,GSを見るとわかることがある.
3) Researchmap
次にResearchmapでの出版履歴と外部資金取得歴である.実は科研費などの外部資金(研究費)を取ってくる場合,教員は自分の出版歴・外部資金取得歴などをResearchmapに登録することになっている.つまり,ここを見れば教員の出版歴と教員が持っている研究費の金額がかなりわかる.ちなみにResearchmapは自動更新ではないため,あまり更新しない教員もいる. 4) KAKEN
最後にKAKENである.科研費の取得歴,それを用いた研究の進捗状況・成果報告がまとまっている.Researchmapに外部資金取得歴が載っていない場合は,こちらをみれば科研費だけなら載っている可能性が高い(Researchmapは自動更新ではないが,恐らくKAKENは自動更新である). 上の4つの業績調査方法は,大学教員ならほぼ全員知っている手法である.学生もある程度これらについて習熟し,ラボ選びの参考にした方がいいと思う.