スマホ脳
📘概要
■ 著者・簡単な経歴
アンデシュ・ハンセン(Anders Hansen)
精神科医、スウェーデン王立工科大学卒。ストックホルム商科大学でMBAを取得後、カロリンスカ研究所で医学を学ぶ。脳科学や心理学を一般向けにわかりやすく解説する著作で知られ、テレビやラジオなどでも活躍している。
■ 発売日
スウェーデンでの初版は2019年。
日本語版は2020年11月(新潮社より出版)。
■ 売れ行き
日本では異例のベストセラーとなり、累計100万部超え(2023年時点)。ビジネス書、教養書ランキングでも長期間上位をキープし、中高生の読書感想文課題図書としても人気。
■ 目次(日本語版より)
スマホがあなたの脳に与える影響
集中力が削られていく
ストレスの時代
SNSと承認欲求
子どもとスマホ
スマホと睡眠
動くことの力
デジタル社会で生きるために
私たちはどうすればいいのか
📖サマリー(15分読了相当)
本書『スマホ脳』は、現代人がいかにスマートフォンによって精神的・身体的に影響を受けているかを、科学的知見に基づいて解説します。著者アンデシュ・ハンセンは、私たちの脳が「狩猟採集時代に最適化されている」ことを前提に、現代の情報過多なデジタル環境がどのように脳の働きを狂わせているかを明らかにしていきます。
1. スマホは「脳の報酬系」を刺激する
通知音、SNSの「いいね」、動画の再生回数などは、脳内のドーパミンを刺激する報酬です。脳は常に「新しい情報」を探しており、スマホはそれを無限に提供する装置。結果として依存症のような状態を生み出します。
2. 集中力が奪われる
通知音や着信を「無視しているつもり」でも、脳は反応しており、集中力が断続的に切断される。これは「マルチタスク」ではなく「スイッチングタスク」と呼ばれ、脳に非常に負担をかける行為です。
3. スマホと不安・うつ
SNSなどで他人と比較し続けることで、自己肯定感が低下し、不安やうつ傾向が増すことが、複数の研究で示されています。とくに若年層(10代〜20代)でその傾向が顕著。
4. 子どもとスクリーンの関係
子どもの発達段階では、「実際の体験」「身体を動かすこと」が極めて重要です。画面から得られる刺激は偏っており、発達に悪影響を与える恐れがあると指摘されています。
5. 睡眠の質が低下する
スマホの光(ブルーライト)はメラトニンの分泌を抑制し、睡眠の質を下げます。また、寝る直前までのSNSや動画視聴は、脳を興奮状態のまま眠りに導いてしまうため、深い眠りが得にくくなります。
6. 対策としての「運動」と「ルール化」
筆者はスマホ断ちを勧めるわけではなく、意識的に使い方を見直すことを提案しています。例えば:
通知をオフにする
SNSアプリを削除する
スマホをベッドに持ち込まない
1日30分以上の有酸素運動をする(脳に非常に効果的)
🌟面白い事例・具体例
サルを使った実験では、「不定期な報酬」が脳を最も強く刺激することがわかっています。これがSNSの「いつ来るかわからないいいね」に依存性がある理由。
アメリカのティーンエイジャーの調査では、SNSの利用時間が1日3時間を超えると、うつ症状のリスクが劇的に増加。
アップルのCEOティム・クック自身が、「子どもにはスマホを与えない」と公言しているエピソードが紹介され、皮肉的でもある。
スマホがもたらす利便性を享受しつつも、「脳のしくみ」を理解することで、健康的な使い方を模索していくための一冊です。読了後には、通知を切りたくなったり、外を走りたくなるかもしれません。