「人にやさしい情報発信」をめざして~花王の4年間のウェブアクセシビリティの道のり~
花王に入ってからアクセシビリティ浸透・推進を始めた
花王のサイト制作環境と制作体制
グループ全体で同じCMSを使っている
マーケティングプラットフォーム部でCMSの保守・管理・機能開発を担当
アクセシビリティを始めたきっかけ
生活者がより使いやすいWebサイトにするためシステム観点でできることとしてアクセシビリティが浮上
取り組むことを決めた理由
"よきモノづくり"
花王グループ自体が "よきモノづくり" を基本にしている
花王ユニバーサルデザイン指針
人にやさしいモノづくり
きざみをつけた容器のシャンプーを1991年に販売開始
ボディソープ容器にラインを追加したものを2015年から採用
ラインをつけることがJIS規格になっているらしい
詰め替えパックのキャップにもきざみとラインを2016年から採用
人にやさしい情報発信
製品の情報も「誰にでも分かりやすく」なければならない
点字シール・字幕付きTVCM
次のステップとしてWebアクセシビリティの確保・向上が必要になってきた
顧客接点の拡大
縮小かつ多様化していく日本市場で、どのようにして売り上げ確保・維持していくか
人口減少・超高齢社会・日本語に慣れていない人々の増加
海外の状況
当時(2020年)アメリカではウェブアクセシビリティ訴訟が増加傾向にあった
コロナ禍の影響
海外でも事業をおこなっているため、法的リスクの可能性があった
アメリカのADA、EUの法律
日本でも同様のことが起こり得る可能性はあった
短期間で改善するのは困難なので、長い時間をかけて取り組む必要があった
アクセシビリティ診断(2020年8〜10月)
CMS起因が6割、コンテンツ起因が4割
CMSの特長として花王用にカスタマイズしたコンポーネントがある
フォーカスが当たらない
代替テキストがない
課題
コンテンツのアクセシビリティを高めるために、700以上ある名サイトオーナーに対応をお願いする必要があった
日本国内だけでも400サイトあった
社内の理解獲得に向けた活動(2020年11月〜2021年6月)
ESG担当の部署および役員に提言
"It's the right thing to do"
ウェブアクセシビリティ推進体制立ち上げ(2021年9月)
会社横断のウェブアクセシビリティ推進体制を立ち上げた
さまざまな部署に参画してもらったので、現場の理解を得られやすかった
ウェブアクセシビリティ方針の公開(2022年3月)
方針を出すタイミングは推進体制で議論になった
100%できていないのに出す?→そもそも100%はない
「先にだしてはいけない」というルールはない
社内にむけて、それだけ強い意志をもって取り組むことを知らせる
関係者向けの説明会(2022年4月〜5月)
社内への説明会
"よきモノづくり"の延長ということで「アクセシビリティとは何か」「なぜ重要なのか」に集中した
外部パートナー向けの説明会
花王の取り組みで初めて知ったというのが3割いた
コンテンツ改善の進め方
WCAG 2.1 レベルA・AAの達成基準に基づいたチェックシートを用意した
CMSの仕様も考慮する必要があったので独自で作った。制作過程で専門家の意見も受けた
チェックシートの対応指標
チェック項目を全て満たすのは難しい
i~iiiのグループに分けて対応指標として少なくともi~iiの80%に対応することを目標とした
チェックシートを用意した理由
いくつかの課題を想定した
制作工程によって委託先が異なる
サイトオーナーの指示で要件を満たせない
要件を満たすよう作業したかサイトオーバーが確認するのは困難
アクセシビリティに詳しくない外部パートナーが確認するのは困難
実践は花王が初めてというのが5割いた
進捗
日本向けサイトの8割はチェックシートを使って改善済み
現在の状況
全体としては「アクセシビリティを維持して運用する」段階に移行
他にやってきたこと、いま進めること
社内向けサポート資料の用意・勉強会開催
技術的な話に詳しくなくてもアクセシブルなコンテンツ企画をできるよう、噛み砕いたサポート資料やテーマ別勉強会の開催をしている
代替テキストやコントラスト比に絞ったりなど
サポート窓口の開設(外部委託)
気軽に専門家に相談してアドバイスしてもらえるサポート窓口
花王独自の動きと思っていた人もいたので、専門家の意見も取り入れることで説得力を持たせた
ウォークスルー調査
障害当事者が評価者になった
ユーザーの実際の適応力や使用状況は予測が難しい
日本以外のアジア向けサイトの改善
できる範囲で対応
同じCMSを使っているが、一律の推進は難しい
"よきモノづくり"は花王グループ共通
世界的な法整備
日本でおこなった改善を他のアジア地域のサイトにも反映
メリーズの事例
"できたつもり"の部分の改善
チェックシートはあくまでセルフチェック
誤ったチェックや外部パートナーの知見に依存することが大きい
勉強会などを通じて知識をつけてもらう
CMSを使っていないサイトの対応
表現や施策をより自由にやりたいという話でCMSを使わない場合もある
アクセシビリティ向上の難易度が上がる
はじめから意識してサイトを企画する
まだまだ最後に思い出して取り掛かるサイトもある
社内啓発を継続しておこなっていくしかない
セキュリティのように最初から考えていけるようにしていきたい
ウェブアクセシビリティの先にある目指す姿
花王が提供する製品・情報が多くの人にとってやさしい
アクセシビリティ推進のための3点
「どうやるか」より「なぜやるか」
仲間をたくさん作る(関係者を巻き込む)
できるところから少しずつやる
減点法ではなく加点法で考える
前向きにコツコツ積み上げる
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