スタートアップの熱狂とチームトポロジー
結局、組織拡大においてパワープレーは持続性に欠けます。組織やシステムを権限分離して、独立性や自律性を高める話には向き合わざるを得ません。
なるべくシステムはモノリシックにして、単一チームでのパワープレーを維持したかった自分にとって、チームトポロジーは身につまされる本でした。認知負荷の限界があることを認め、それをどのように構造的に解決するか、という視点をこの本から得られました。 しかし、認知負荷の存在を認めつつもどう立ち向かっていくかがチームトポロジーなのであって、認知負荷に日和ってブレーキを踏み合っていたら意味がありません。局所最適に陥らずに、チームが増えコミュニケーションパスが複雑化してもスピードを落とさないようにしないといけない。
何事も境界をきれいに切ろうとすると、絶対に隙間が生まれてしまいます。境界部分のオーバーラップとインタラクション設計が重要です。人間、境界が見えてしまうと、どうしてもその手前でブレーキをかけることが増え、そこにポテンヒットが集まってしまう。組織においてそれが起こることは「技術の創造と設計」の以下の図がよく表しています。 システム設計におけるレイヤードアーキテクチャーも、境界をきれいに切り分けようとすると、逆に隙間だらけで融通の効かないスカスカのバームクーヘンになる危険性があります。 チープトポロジーもレイヤードアーキテクチャーも大事なプラクティスではありますが、形式張って進めすぎると、多くの衰退した大企業が歩んできた轍を踏むことになりかねません。組織の「成熟」を早め、いわゆる大企業病を加速させてしまう諸刃の剣であるように思えるのです。
私としては、境界の手前でブレーキを踏まず、その上での健全な衝突が発生することを良しとしたい。同時にお互いにストレスを抱え合うような、感情的で無駄な軋轢が起きてほしくないとも思っています。