Globasaの成功はいかにしてもたらされたか
まだ成功というほどの規模かは疑わしくもありますが,少なくとも,現代の補助語にまつわるコミュニティのなかでもっとも広く受容されている Worldlang が Globasa であると主張することは,さほど突飛なことでもないと思います。
まあ,そうした普及の理由を私が知っているわけでもないのですが,いくつか思い当たる節があるので,つらつらと書いてゆこうと思います。
SNSで活発さを印象づける
Reddit を見てみると,日夜あたらしい語彙が提案されていることがわかります。これにより,ちゃんとコミュニティが存在していて,活動がなされているのだということを,インターネットさえあれば確かめることができます。
そもそも,私が「Globasaは成功している」というときには,「Globasaはインターネットで存在感を得ている」ということ自体を意味している場合も多いので,やや同語反復の感はあります
Lidepla は Telegram で人気らしいし Pandunia も Discord サーバーが若干賑わっているようですが,あれらは参加して初めて中身が見えるものなので,定住者を増やすには有効でも新規参入者を増やす助けにはそんなになっていないかもしれません
あと,たいへん便利なことに, Reddit への投稿は「Google検索で引っかかる」ので,上の両者より気づいてもらえやすいです
造語の提案がされているというのは裏を返せば発達途上の未完成な言語であるということでもあるのですが,実際のところ,学習者たちがどの程度そこを気にしているのかははっきりしません。アンケートを取ったことすらないので内心を推量するには判断材料があまりに足りてないですね。
もしかすると,いま完成していなくても,いつか完成するのであればそれでいいという気持ちがあるかもしれません。人工補助語は中途で放棄される事例が本当に多いので,いくら暫定的な語彙が多くても開発が止まれば意味がないと感じることはありえると思います。
熱心なファン
割と大事です。人工補助語は(特に補助語では)ものすごくたくさんの造語をしなければならないですし,新しくやってきた学習者に「ここの文法はどうなってるんですか?」と訊かれたときに作者しか答えられないようでは効率も悪いし過疎な印象を与えることでしょう。
Gの場合,積極的に造語しているのが作者ではなく特定の学習者だったりします
作者の継続的な貢献
けっきょく作者が諦めてしまうと補助語じたいも打ち切りになったり内部分裂したりでうまくゆきませんからね。
いま作者(Hector)はサイトのレイアウトや辞書の仕様などを中心に監督しているみたいです。
公式サイトの読みやすさ
Lideplaのサイトは携帯から見るとレイアウトが若干崩れるしデフォルトでは文字が小さいし古い辞書が古いまま放置されていて新しい辞書への誘導もないし https にも対応していないというさんざんなありさまで,Pandunia はビジュアル的には問題は少なかったと思うのですが長らく文法と語彙が安定していなかったせいで廃止された語彙や文法がときどき残っていたりしました(いまはたぶんかなり改善されています)。
これは比較対象が悪すぎる感もややあります
正直なところ Pandunia のほうはサイト内検索ができるという点では G を上回っていると思います。
文法を忘れてしまったときに「どこに書いてあるんだっけ…」といちいち迷うのはたいへん非効率的なので避けたいのです
いちおうこの点については pdf 版が公式サイトで配布されるようになったので,多少の改善はあったといえます
安定性のアピール
19世紀末にも見られた光景なのですが,文法の改定が多い言語が台頭すると,それに不満を持ったひとびとが徒党を組んで安定性を要求します。今世紀では Pandunia がその変化に富んだ言語です。
実際の安定性と印象上の安定性はしばしば乖離します。エスペラントが実際には大きく変化をしながらも安定的な言語と見られたことからもそれがわかるでしょう。
実態と必ずしも連動しない形で安定性を印象づけられたのは,エスの場合には,16条文法と原則の影響が大きいのでしょう。
そういえば記事にした覚えがないのでちょっとだけ例示しておくと,ここにいうエスの変化というのは,-ad- が反復されていない動作をも指すようになったとか,jam ne と言えるところで ne plu というほうが一般的になったとか, pli granda, ol mi の ol などの前にはコンマを置かなくなったとか,そういう話です。もっとも,これらはいずれも改廃というよりは追加と呼ぶべきものであって,重要なのは後方互換性を保つことなのだと主張されれば,その通りかもしれません。
ちなみに,Globasa も別にそれほど安定してはいなくて,「90%以上安定しているよ!」と主張した後でコピュラの単語を is から sen に変更するといったことをしています。直近では「99%以上安定している」段階になってから hu 節の da を義務化するなどしていますし。少なくとも Lidepla よりは安定性に乏しい。
造語方法の確立
これがあるので作者でもない人物が新語を提案することができます。あったところで生き延びられるかはわかりませんが,なければ作者の死と同時に言語の発展が止まってしまうこともあるでしょう。
西洋補助語なら基本的にどんな語形を使うかの選択肢がそもそも少ないので適当に慣例に従っていても大した問題にはならない(表記ゆれが存在するにせよ,一方の語を知っているひとにとってもう一方が見慣れないということもそうそうない)のですが,Worldlangではどの語族の単語を引っ張ってくるかというところから決めねばならず,負担がかかります
あと,やや話が逸れますが,さきほど少しだけ触れた通り,ファンが造語を済ませてくれるので,作者が楽をできるという嬉しさもあります
意味重視の設計
Lidepla や西洋補助語が伝統に従って不規則性と紛らわしさを維持してゆくなか,Globasa と Pandunia はこれに抗って一貫性を追求しています。じっさい,不規則でよくて,紛らわしくてよいというのであれば,英語かエスに向かうのがいちばんふつうなわけですから,わざわざマイナーな補助語を選び取るひとびとが G 側にやってくるのも頷けます。
また,西洋語由来の不規則性を甘受するというのであれば,わざわざ wordlang に走らずに Occidental に手を出すということができるはずです。Lidepla の不人気はこれに因るものでしょう。
ただ,個人的には Pandunia は文法を軽くしすぎたあまりに言い回しを工夫しないといけない場面が多くあるような気がしています
これは私が勝手に思っているだけなので他のひとにとってはそんなに関係がないのかもしれません